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先輩で友達
「先輩達って周さんと修斗さんの事? なに? ……バックにつけてるって」
真司君が周さんたちの事をなんだかおかしなニュアンスで言うもんだからちょっと気になってしまった。
「だってよ、いつも竜太あの先輩たちと一緒だし、特にあの橘先輩! 竜太に頭上がらなそうじゃんか。前から凄え不思議に思ってたんだよね。竜太、本当はめちゃくちゃ強えんじゃねえの? どうやってあの人たち従えてるの??」
「………… 」
従えてるって。
僕と周さんたちってそんな風に見えてるのかな?
……いや、多分真司君の見方が変なんだ。
「……なんかさ、誤解してるみたいだけど周さんや修斗さんは先輩だけど大切な友達だよ。従えてる……なんてそんな事あるわけないし」
きっと僕と周さんが付き合ってるなんて言ったら混乱しそうだから、その事は言わないでおこう。
「竜太やっぱすげえな! 先輩捕まえて友達呼ばわり。只者じゃねえな!」
「………… 」
真司君、僕の話聞いてない? なんかまだおかしな事言ってるけどもう面倒臭いしまぁいいか……
その日は結構遅くまで、真司君の家で打ち合わせをした。
信じられないことに、真司君はどうやら僕の事を純粋にかっこいいって思ってくれてるらしい。
嬉しいやら恥ずかしいやら。
徹底的に男らしくして、真司君を惚れさせる勢いで演じろ! なんて言われてしまった。
……できるかな。
後、髪型が伸び放題でだらしなくなってるから短くしてこいって言われてしまった。
でも明日から撮影だって言ってたよね? 今日中に切らないとダメじゃないの? もっと早く言ってよ……と文句を言ったら、無理ならしょうがないし切らなくてもいいって。どっちだよ……
この時間でも僕の通っている美容院はまだ開いているけど、そこには行かずに僕は康介の家に直行した。
「康介ごめんね、こんな時間に……陽介さん今いるかな?」
陽介さんが居なかったら髪は切らない。そう思って僕はここに来た。
卒業して美容の専門学校に進んだ陽介さん。卒業してから殆ど会っていない。でも、いつも圭さんの髪の毛をカッコ良くカットしていたのを知ってるから、どうせ髪を切るなら陽介さんにお願いしたかった。
「ん? いるよ。何? 俺じゃなくて兄貴に用?」
怪訝そうな顔をする康介に頷き、お邪魔させてもらう。
「陽介さん、ご無沙汰してます」
開きっぱなしの陽介さんの部屋のドア。
部屋のドアをノックしながら中を覗くと、ベッドに横になりながらヘッドホンで何かを聴いている陽介さんが顔を上げる。
「お? 竜太君久々だね、元気? 遊び来たの?」
いつもの優しそうな笑顔で僕を迎えてくれる陽介さん。
あれ?……少し痩せた? 気のせいかな。
「あの、陽介さんにお願いがあって……」
なに? と首を傾げる陽介さんに事情を説明すると、快くオッケーしてくれた。
……よかった。
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