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イメージチェンジ

「あ、あの…… 」 「でもな! 寂しい事には変わりないけど、大丈夫だよ。合コンは本当に関係ない。人数合わせに使われてるだけ。俺はどんなに綺麗な女の子が目の前にいたってなんとも思わないし……それにどんなにいい男がいたって圭ちゃん以上の奴なんていないだろ?」 「………… 」 「圭ちゃんは必ず帰ってくるし、今頃圭ちゃんだって俺に会えなくて寂しいって思ってるから。だから早く帰ってこようと頑張ってんじゃん? 早かろうが遅かろうが、また必ず会えるんだから大丈夫だよ。離れててもさ、ここん中は一緒だから……」 そう言って陽介さんは自分の胸を拳で叩いた。 ……凄い。 なんだか僕、泣きそうになっちゃった。 やっぱり陽介さんと圭さんって凄いな。「別れた」とか言っちゃって、それでも信じあって待ってるんだ…… 僕なんかが心配しててもしょうがないや。 「変な事言ってごめんなさい。早く帰ってきてくれるといいですよね。僕も圭さんに会いたいや……」 「そうだな、早く会いてえな」 少ししか時間が経っていないのに、陽介さんはケープを外し大きな羽根みたいな物で僕の肩をサッと払う。 「終わったよ。どうかな? 気に入った?」 鏡の方を見ると、今まで見た事ないくらい短髪になった僕の姿が映っていた。 「おぉ! バッサリすっきりですね! 首が寒いや!……どうですか? 僕少しは男らしくなったかな?」 首を摩りながら、僕は鏡越しに陽介さんを見た。 「うん、凄いイメチェンだね。竜太君って首筋細くて白いねぇ……男らしくもなったけど、色気も増したんじゃない? 大丈夫?」 背後から僕の肩に手を置き、陽介さんがクスクスと笑いながら顔を僕の首元に近づける。露わになった首に陽介さんがわざと息を吹きかけた。 「ひゃっ……もう、揶揄わないでください!……でも本当ありがとうございました。なんか僕じゃないみたい」 ちょうど康介も部屋に入ってきて、僕の姿を見て固まった。 「……竜、マジか。すげぇ切ったな……髪」 ボソッと呟く康介に、陽介さんが笑う。 「おいおい康介、顔真っ赤だぞ? 竜太君に惚れんなよ。修斗に怒られんぞ」 次の日、学校に行くと早速志音に捕まった。 「なに! どうしたの! 竜太君すっごい短く切ったんだね! ……あ、なんか圭さんの髪型に似てる。色は全然違うけど」 うわぁ、さすが志音、圭さんの真似したのすぐバレちゃった。 「そう、昨晩陽介さんに切ってもらったんだ。圭さんみたいに短くしてって頼んだの……どうかな? 男らしくなったかな?」 陽介さんや康介、母さんにもカッコいいって褒められたけど、やっぱり僕は自信がなかった。僕はオシャレにうるさい志音にドキドキしながら聞いてみた。 「ガラッとイメチェン、いいと思うよ。うん、男らしいっちゃ男らしいかな。てか竜太君、首筋が妙に色っぽいのな。男らしさとエロさダダ漏れ? 大丈夫?」 「………… 」 志音も陽介さんと同じことを言う。 「また! すぐにそういうこと言って揶揄うんだから! いいよもう! ……でもありがとう。ちょっと自信ついた」 僕は恥ずかしくなって首を両手で押さえる。 「竜太君カッコよくなっちゃって、周さんがやきもきしちゃうんじゃないの? ふふ……なんか想像つく」 予鈴が鳴り、志音はそう言ってクスクスしながら自分の席に歩いていった。

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