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ファインダーの中の美男美女
放課後、部室で文化祭の看板作り──
昼休みは周さんには会えなかった。
そうそう、昼休みに修斗さんにも髪型を沢山褒めてもらって嬉しかった。みんなに褒めてもらえるとやっぱ少しは自信がつくよね。
「おおっ? 渡瀬先輩どうしたんですか! すげぇカッコいい、やべぇ!」
部室に入るなり、美術部の一年生の工藤君が興奮気味に僕の隣に来る。そんなにまじまじと見つめられると照れくさい。
「は……恥ずかしいからそんなに近くで見ないでくれる?」
「あ! すんませんっ。見惚れちゃった」
「………… 」
いつもは早くに部室にいる入江君。今日は珍しくまだ来ていなかった。
「ねぇ、入江君は今日は休み? 個人の展示作品は終わってるのかな?」
「ああ、祐飛はね……いま衣装合わせ中なんですよ。あいつ……ククッ、ジャンケン負けて……ふふっ、メイドやるんです。俺らのクラス、メイド喫茶なんですよ。定番の女装って可愛いやつとかがやってもいいんだけど、祐飛みたいにツンとして絶対やらなそうな奴が嫌々やってんのも面白いっすよね。あいつ似合うのかな?」
工藤君は笑いを堪えながら、凄い楽しそうにそう言った。
女装かぁ……
入江君、嫌だろうな。可哀想に。
でも、ムッとしてメイドさんになってる姿が想像ついて、僕も少し笑ってしまった。
「俺らのクラスね、半数がメイドさんの格好なんですよ! 凄いでしょ! だからいろんなメイドさんに会えるから先輩も遊びに来てくださいね」
「工藤君はメイドさんにならないの?」
「え? 俺? ……俺はイケメン執事コスです。メイドなんかやりません」
工藤君はドヤ顔で自らイケメン宣言をして、作業に取り掛かった。
看板作りと自分の作品を少し進めて、僕はまたクラスに戻る。
今日から撮影スタートだ。
真司君は先生に許可を取ってあるからと言って、僕らに校内での撮影だと教えてくれた。
着替えもあるし早目に教室に来るようにって言ってたけど……そんなに遅れてないよね? ちょっと心配だったから僕は小走りで教室に向かった。
教室のドアを開けるとロングヘアの女の人が足を組んで机の上に座っているのが目に飛び込んでくる。
「あ……の、え……? え! もしかして真司君?」
女の人がこの男子校にいるわけがないし、冷静に考えて女装をした真司君だってすぐにわかるのだけど、それにしてもだいぶ違うから動揺してしまう。
「凄い! 綺麗だね!」
不覚にもドキドキしてしまった。
「おう! あったりめえよ! 俺だぞ俺! 美人に化けるに決まってんだろ」
紅い唇を大きく開いて真司君はゲラゲラと笑う。
どうりで綺麗……
お化粧までしてるんだ。
「あの……僕、女の人……苦手で、なんかドキドキしちゃってやりにくいかも」
「あ? 女が苦手って、俺は男だぞ? てか竜太、いいね! 髪、随分切ったんだな。やっぱり短い方がいい。いい男だ!」
机からおりた真司君が僕に近づき、髪を弄りながら褒めてくれた。
横でカメラマンの斉藤君が、ファインダーを覗きながら溜息を吐く。
「美男美女……絵になるね」
そう言ってクスクスと笑った。
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