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上映会
校舎に入ると、既に来場者が入っていて廊下は賑わい始めていた。
上映会の会場になる視聴覚室に行くと、もうみんなスタンバイしていて遅いと言って怒られてしまった。
でも舞台挨拶なんて聞いてないし……
きっと真司君の突然の思いつきで決まったんだろうな。
「あと五分で最初の上映スタートだからな……はい、みんな集まって!」
真司君の掛け声で、みんなで円陣を組む。
……いちいち暑苦しい。
でも、なんかこうやってみんなで作り上げて、団結するのも楽しいかもって思えてきた。
廊下にはもう何人かお客さんが並んでいる。
僕は気がつかなかったけど、下駄箱からここまで何枚かポスターも貼ってあったらしく、廊下に出たら何人かの女の人に声をかけられてしまった。
囲まれてしまってどうしたらいいのか困っていると、修斗さんと康介がやってきて助けてくれた。
康介は相変わらずなんだかプリプリしている。
「なんなん? 竜も修斗さんも女の子に囲まれて! 修斗さんなんかさ、さっき男にも囲まれちゃってさ、なかなか出てこないんだもん」
よく見ると修斗さん、制服じゃないし……
「修斗さん、服……」
「あ、そうなの。ギリギリまで康介と一緒に遊びたいからさ、もうライブの服に着替えちゃった」
楽しそうな修斗さんに康介は顔を赤くする。
「そんなこと言ったって俺、クラスの手伝いもあるから……」
「うん、わかってるし。康介のお化け屋敷も俺遊びに行くよ」
康介の後ろから飛びつくようにして抱きついてる修斗さん。
それを振り落とそうとジタバタしてる康介。
「………… 」
いつも二人仲良しだ。
なんだかちょっと羨ましいな。
「そういえばもう始まるんだろ? 周はどうした? 来ねえの?」
視聴覚室に案内して席に着くなり修斗さんに聞かれる。
周さんはあまり興味がなさそうだったことを伝えると、修斗さんは笑いながら否定した。
「違うよ、興味あるけど見れないんだよ。周のやつ、竜太君の相手役にイラついてダメみたいだよ。まったくどうしようもないねぇ。焼きもちやきだから周は……あれ? 竜太君嬉しそう?」
周さん、興味なさそうだったけど違うんだ……
あのキスシーンは勿論見られたくはないけど、なんか焼きもち妬いてくれるのが嬉しくてニヤけてしまった。
ああ、だからさっき真司君に殴りたくなるから……って言ったのか。
「ふふ……なんかちょっと嬉しいです。あ、ニ人とも楽しんでいってくださいね。僕の演技は下手なんで恥ずかしいんですけど……」
修斗さんと康介にそう言って、僕は後ろの席に下がった。
「あれ谷中先輩だろ? あの人やっぱすげぇカッコいいな。超目立つ……あの人らのバンド目当てに他校からもめっちゃ人来てるよな。すげえな」
隣に座った真司君が楽しそうにお喋りするのを僕は適当に相槌打って聞いていた。
そのうちに会場内が暗くなり、最初の上映会が始まった──
自分で自分の下手くそな演技を見るのって拷問だよね……
真司君や斉藤君は凄く褒めてくれるけど、こんなに恥ずかしいものはない。短い時間だけど、僕は羞恥に耐えなんとか最後まで見届けた。そして会場内が明るくなり、僕らは司会者に促されて立ち上がる。順にキャストの紹介をして、そして主役がひと言だけ喋ることになってしまった。こういうのは慣れてないから困るんだよ。
でもみんなが僕に注目する中、製作にあたっての感想や努力した事など、緊張したけどなんとか話すことができた。
その後、結局真司君もしゃしゃり出てきて会場内を盛り上げてくれて、僕らのクラスの最初の上映会は無事に終わった。
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