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焼きそばとメイドさん

一回目の挨拶さえ終われば後は自由行動できるので、早速僕は周さんのクラスへと向かった。勿論、康介と修斗さんも一緒に。 康介も修斗さんも、さっきの上映会の事をしきりに話してくる。 「ほんと、驚いたよな。竜太君あんなに男らしい表情……あれはわかるよ、あんな風に迫られたら誰でもキスされてもいいって思うって。男らしかったなぁ。かっこよかったなぁ」 修斗さんが冗談ぽくそう話すのを、僕はハラハラしながら……康介はプンプンしながら聞いている。 「なんだよ修斗さん、周さんに怒られますよ! 竜がかっこよかったのはわかるけど……何で周さん見にこねえんだよ。なぁ? 竜」 「………… 」 康介が焼きもち妬いてプンプンしてるのを修斗さんは面白がってる。 「ちょっと康介、竜太君の事かっこいいって言わないでくれる? 俺と竜太君、どっちがかっこいいの?」 自分が散々言っていたことはさておき、そんな事を言ってまた康介を赤くさせた。 周さんと修斗さんのクラスは焼きそば屋さん。 調理室の廊下にもベンチを出して、何人かはそこで焼きそばを食べていた。 「あ! 陽介さんと靖史さんだ……」 よく見ると、端の席に座っていたのは陽介さんと靖史さんだった。 靖史さん、久しぶりで嬉しいな。 「お! 竜太君髪切ったの? 凄いカッコイイじゃん。なんか圭みたいだな」 靖史さんは陽介さんを見ながらそう言って笑った。 「そうだよ、俺が切ったんだもん。圭ちゃんみたいに短くってリクエストだったからね。さっき竜太君のクラスの見たよ。凄い頑張ったね。竜太君の意外な一面見たって感じ。カッコよくてびっくりした」 陽介さんと靖史さんにも見られてたんだ……来てたの気がつかなかった。 「やめてください、恥ずかしいです」 僕が恥ずかしさで俯いていると、後ろから誰かにギュッと抱きしめられた。 「はいはい、そんな睨むなって周くん」 陽介さんが笑って見上げた先には不機嫌そうな周さん。 「竜太遅い……俺の焼きそば食う?」 不貞腐れた顔をした周さんが後ろから僕にそう聞くので、あまりお腹は空いてなかったけどひとつ頂くことにした。 僕が頼むと嬉しそうに周さんは教室に戻っていき、しばらくすると焼きそばを手に持って僕の横に腰掛けた。 「これ俺が作った」 「ダメじゃん、周は散らかすから調理すんなって言われてるでしょ」 修斗さんが揶揄うように言うと「竜太のは俺がやりたかったの!」と周さんは口を尖らせた。 ちょっと可愛い…… 「ありがとうございます。周さんいただきますね」 みんなで廊下で焼きそばを食べながらお喋りをしていると、向こうの方からやけに賑やかな声が聞こえてくる。 「なんだろ? 人がいっぱい……」 人だかりが少しずつ近づいてくると、何人かのメイドさん姿の男子生徒とその取り巻きだとわかった。 「……? あれ? 直樹君?」 よく見ると私服姿の直樹君が一人のメイドさんにひっついて歩き、何か言ってる。 「……て事はさ、あのメイドさん祐飛じゃね?」 康介が面白そうって顔をして立ち上がり近づいていった。

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