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四人と一人/文化祭二日目

文化祭ニ日目── 今日も最初の舞台挨拶を済ませてその後は自由時間。 すぐに康介と一緒に周さんの教室へ向かった。 修斗さんも一緒に四人で、入江君のクラスのメイド喫茶に行こうと約束をしていたから。でも、康介と歩き始めてすぐに真司君に捕まってしまった。 「ねえ、どこ行くの? 俺も俺も! ……君、康介君だよね? 俺真司ね、よろしくね。康介って竜太と仲いいんだな、いっつも一緒にいねぇ? てかさ、これからどこ行くの?」 「………… 」 真司君は僕の事を気に入ってしまったのか、撮影の時から凄く馴れ馴れしくしてくる。そしてよく喋る…… 「お前うるさいね。いつもそんななの? ちょっと、竜嫌がってんじゃん、離れろって」 康介が眉間にシワ寄せてあからさまに嫌そうにそう言うも、全く動じずに真司君は益々僕にくっついてくる。 「嫌がってなんかないね。竜太は俺の相棒なの!」 腕を絡めながら大声で話す真司君に、僕もいい加減うんざりして腕から抜け出した。 「もう、そんなにくっつかないでよ。僕達これから三年生のところに行くから…… 」 そう言ったら、僕らが周さん達のところへ行くとわかったらしく、嬉しそうについて来てしまった。普通周さん達とは親しくないんだから、真司君は遠慮しない? 何でついて来ちゃうの? 「橘先輩と谷中先輩! 昨日のライブ、カッコよかったなあ。あれは惚れるよ! 橘先輩すげぇ怖そうなのになにあれ! あんな優しい眼差しでさ、反則でしょ。男でも惚れるよマジで! 曲もめっちゃ好き! かっこいい! 谷中先輩もさ、超綺麗! そんでさ、笑うとめっちゃ可愛いのな! あ! もしかしてドラムの人も知り合いなの?? あの人は何歳? 大人だよね? 貫禄あるよね」 廊下中 響くくらいの大きな声で夢中になって喋ってる。 周さん達のところに着く前に、僕らの事に気がついた周さんと修斗さんが歩いてこっちに来てくれた。 「なに? こいつ、康介の友達?」 修斗さんがにこにこしながら真司君を指差す。 「なんで俺? 竜のクラスの奴ですよ」 「だってなんか康介と同じ匂いがしたから……」 クスクスと笑う修斗さんに、康介が「違うだろ!」って文句を言った。 僕の横にピタッとくっついてる真司君がコソコソっと耳打ちをする。 「ねぇ、俺の事紹介してよ……」 ここまでついて来てしまったし、仕方がないので改めて周さんと修斗さんに紹介をした。 「僕のクラスメイトの真司君です……真司君も一緒に行きたいって言ってて……」 不機嫌そうな周さんの顔色を伺いながら僕は話す。 そんな僕の心情なんてまるでわからない真司君は、嬉しそうに僕の肩に腕を回して頬をくっ付ける勢いで話し始めた。 「竜太の相棒で〜す。真司って呼んでください。よろしくお願いしまっす!」 「ちょっと! ベタベタしないで! 真司君、離れてよ!」 周さんの前でくっついてきてほしくなくて、思い切り真司君を跳ね除ける。でも僕の力がないのか真司君はビクともしなかった…… 「またまたぁ、照れちゃって。でも俺が相棒アピールしないとさ、竜太他の奴らにモテモテだからね。凄えんだよ、知らなかった? 竜太のこと紹介してくれとかめっちゃ言われんの俺!」 ゲラゲラ笑いながら真司君がそんな事を言う。 「知らないし! そんなこと言われてるわけがないじゃん」 真司君、きっと面白がって適当な事言ってるんだ。 「は? 違うよ、男ばっかじゃなくて女もだよ。俺、他校の女友達もいっぱいいるのよ? 竜太好きな人いそうだしさ、そういうの面倒くさいだろ? 俺っていい奴。な? モテモテ竜太くん」 ……もう、なんなの? これは僕に対する嫌がらせかな? 「あ、そうか。真司君、女の子役やってた子かぁ!」 修斗さんがやっと気が付いてそう言うと、真司君は嬉しそうにはにかんで「そうっす!」と元気よく返事をした。 「竜太……」 周さんが僕に向かって手招きするから、すぐに僕は周さんのところへ駆け寄る。やっと周さんが喋ってくれた。 「真司っつったか? 別に一緒に来てもいいけど、あんま竜太にくっつくな……それとモテモテの竜太の事をお前が心配する必要はねえから」 ボソッとそう言って、僕の肩を抱き歩き出す周さん。 いつもならあんなにベタベタされたら周さんは凄く怒りそうだけど、今日はなんか静かだな。 ちょっと早歩きな周さんに置いて行かれないように、僕はくっついて歩く。後ろでは真司君が修斗さんに何やら色々と質問攻めにしていて、今度は康介をイラつかせていた。 「周さん? なんかすみません……真司君、周さん達の事カッコいいって言ってついてきちゃって……」 本当は康介達と四人で回りたかったのに、ちょっと邪魔された感じがして嫌だった。 「ん?……竜太が謝ることないよ。こういうのはしょうがねえしな」 そう言って周さんは僕から目を逸らし、静かに笑った。

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