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今と変わらず…
入江君達のメイド喫茶をたっぷりと満喫して、僕らは教室を出る。
「俺と康介はクレープ食いに行ってから体育館向かうから。また後でな」
修斗さんは康介の腕を取り、真司君にも手を振ってさっさと行ってしまった。
……僕も周さんとニ人になりたい。
「えっと、真司君は? どうする?」
僕が恐る恐る真司君に声をかけると同時に、周さんが口を開いた。
「悪い、俺は早めに控え室行って集中してえから……」
……え?
「じゃあ、俺は竜太と他回って、後でライブ見に行きますね!」
周さんの言葉を聞いた真司君にがっしりと腕を掴まれてしまった。
なんで?
僕は周さんといたかったのに。でも集中したいならしょうがないか。
「いやいや、そうじゃねえって。真司悪いな、竜太は俺と一緒に行くから」
周さんはそう言って真司君の腕から僕を捕まえ、自分の方へ引き寄せてくれた。
「えー! なんでですか? じゃあ俺も一緒に行きたい〜」
真司君は納得いかないって文句を言ってる。
「ほら……竜太こっち来い。控え室は関係者以外立ち入り禁止だから、真司は後でな」
「なんで? なら竜太も部外者じゃないっすか!」
……そうだよ、それは真司君の言う通りだ。
「もう、お前うるせえな。竜太は部外者じゃねえっての。俺は竜太がいないとリラックスできねえの。わかった? わかったなら早く行け……」
「……なんだよそれ。もう、わかりましたよ。じゃ竜太、後でね」
まだ納得のいかない顔をしていたけど、やっと真司君は向こうへ行ってくれた。
「………… 」
「ほら、行くぞ」
周さんは僕の肩を抱き寄せ、そのまま歩き出す。
あまり人のいない屋上ならともかく、こんなに人が沢山いるところでこうやってくっついて歩くのは珍しい。実はさっきもこうやって肩を抱かれてちょっとドキッとしてしまったんだ。
……僕は嬉しいんだけど。周さんは恥ずかしくないのかな?
「周さん?……どうかしましたか?」
さっきから黙って歩いてる周さんに堪らず声をかけると、僕の方を見てやっと笑ってくれた。
「ん? どうもしねえよ。竜太はどこか行きたい?……俺、本当にちょっと早めに控え室行きたいんだけどいいかな?」
凄く遠慮気味にそんなことを言うもんだから、本当はクレープを食べに行きたかったけど我慢して「もちろん大丈夫ですよ」と僕は答えた。
体育館の横の準備室が控え室。
扉を開けると、まだ誰も来ていない。
……それもそうだよね。
ライブまで、まだまだ時間は沢山ある。
周さんは黙って部屋の奥の椅子に座るとおもむろにギターを取り出す。僕に扉を閉めるように言うと、ゆっくりとギターを弾き始めた。
あ……昨日やった新曲だ。
僕は周さんの前に椅子を持って行き、そこに座って黙って曲を聴いた。
とくに言われたわけじゃないけど、きっとこれは周さんが僕のために作ってくれた歌なんだ。そう思うと自然と顔が綻んだ。
すっかり目を閉じ、周さんの声に聴き入っていると、ふとギターの音が止んだ。
あれ? と思い目を開けると周さんと目が合う。
「竜太……来て」
両手を広げ僕を呼ぶから、僕は周さんの前に立った。
「………… 」
座ったままの周さんは僕の胸に抱きつき、しばらくジッと黙っていた。
「周さんどうしたの?」
周さんの頭を撫で、髪の毛を触りながら僕は聞く。
「今の曲、竜太のために作った……」
僕の胸に顔を埋めたままの周さんがそう言ってくれたから、僕はやっぱり嬉しくなった。
「知ってますよ。すぐにわかりました。ありがとうございます。凄く嬉しい……」
僕がそう言うと周さんは顔を上げ、下から覗き込むようにしてはにかんだ。いつもは僕が周さんの事を見上げてるのに、周さんが座ってて僕が立ってるから今は逆。
下からじっと僕の事を見つめる周さんに、思わず僕は唇を重ねた。
「いつもと目線が違うから、なんかちょっと恥ずかしいです」
顔を離し照れて笑っていると、周さんは僕の手を握ってくれる。
「竜太……もう半年もすればさ、俺は卒業しちゃうけど、それでもずっと一緒にいてくれるか?」
「当たり前ですよ。ふふ……周さんが卒業しちゃっても、今となにも変わりません」
不安そうに見えた周さんに、僕は安心してもらいたくてそう言った。
今更なんでそんな事言うんだろう。
半年もすれば周さん達は卒業してしまう。
それは僕だって寂しい……
けど、前に寂しがってる僕に周さんが大丈夫って言ってくれたでしょ?
だから僕は大丈夫だよ、周さん。
お互い指を絡めあいもう一度キスをしていたら、陽介さんと靖史さんが入ってきて、なにイチャついてんだと怒られてしまった。
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