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周りの目

ライブが終わり周さん達がステージからいなくなると、途端に僕の周りに人が集まる。 「なぁ、さっきの何? どういう関係? 何でボーカルに抱きつかれたの?」 「もしかして付き合ってんの? なになに? 愛の告白?」 「ドッキリ? なんかの余興? てか無言だし意味わかんなくね?」 「………… 」 次から次へ僕に向かって質問が飛ぶ。 中には嫌悪感丸出しで「ホモかよ気持ち悪い」そんな声まで聞こえてきた。 「竜! 気にすんな。行くぞ!」 呆然としていると康介が僕の腕を引っ張り歩き出す。 「あ……うん」 真司君も一緒に来ようとついてきてたみたいだけど、気を利かせて陽介さんが追い払ってくれたらしい。 色んな人に声をかけられながら、僕らは控え室になっている準備室へ向かった。 控え室に入ると奥に周さんが座っていて、その目の前で仁王立ちの修斗さんが結構な剣幕で怒っていた。 「お前なに考えてんだよ! びっくりだよ! 馬鹿じゃねえの? ……どうしたんだよ、あんな事したら竜太君に色々言ってくる奴とか出てくんだろうが! そんな事もわかんねえの? 注目されんのは竜太君の方だぞ!」 周さん…… 「あ……あの、修斗さん……僕なら大丈夫ですから。そんなに怒らないでください」 僕らに気がつかない修斗さんに後ろから声をかけると、申し訳なさそうな顔で振り返り僕の事を見た。 「竜太君……大丈夫だった? 急に驚くよな? 全くさ、俺ら三年のあいだでは、まぁ知った奴も多いけどよ、中には快く思わねえ奴もいるだろうに……」 え? 「僕らの事、知ってる人……多いんですか?」 「知ってるもなにもさ、男子校だし? いつも竜太君、周と一緒にいるだろ? それに去年の体育祭とかの周の態度見てりゃわかる奴にはわかるよ」 修斗さんが溜め息混じりにそう言うと、今度は康介まで慌て始めた。 「ねえ、まさか俺らの事も?」 慌ててる康介を見て、修斗さんは笑う。 「そんな顔すんなって。康介は俺のお気に入りだからちょっかい出すなよって言ってるから大丈夫だし」 「は? お……お気に入りって! 俺、オモチャみたいじゃん」 顔を赤くして、照れてるんだか怒ってるんだかよくわからない康介。 さっきから周さんは黙ったまんまだ。 「周さん?……気にしないでくださいね。僕なら大丈夫です。それに僕、なんだか嬉しかったし」 そう言って周さんの前まで行くと「軽率だった。ごめんな」と周さんは頭を下げた。 「にしてもさ、何で急にあんな事したんだ?」 靖史さんが周さんに聞くと、不貞腐れたように周さんが顔を上げた。 「だってよ、竜太は俺のだから触んな……って思ったらちょうど曲終わったし、気がついたらギター置いて竜太の所まで歩いてた……」 「………… 」 「なにそれ子どもかよっ!」 靖史さんも陽介さんも呆れ顔で周さんに突っ込んだ。 しばらくの間みんなで控え室で過ごし、後夜祭のビンゴ大会に出る予定だったけど廊下に出た途端にまた周りから変な目で見られているのがわかり、嫌な気分になってしまった。 「竜太君、そのうちほとぼりも冷めると思うから気にすんなよ。万が一何かあればすぐに言うんだよ。まぁ周が相手だから危ない事してくるような奴はいないだろうけど」 修斗さんが心配してくれる。 「……大丈夫です。周さんいるし。ありがとうございます」 なんかもう、みんなわかってるんなら別にコソコソしなくてもいいんだよね? そう思って、隣を歩く周さんブレザーの裾をキュッと掴んで僕は歩いた。 僕と周さんは、結局ビンゴに参加するのはやめて、陽介さんと一緒に打ち上げの買い物をしつつ、先に靖史さんの家に行く事にした。

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