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竜太の誕生日/周の独占欲

付き合い始めてニ度目の竜太の誕生日── 今年は何をして驚かそうか…… 何をして喜ばせようか。 かなり前から考えていたんだけどなかなかいいアイデアが浮かばず、どんどん竜太の誕生日が迫ってくる。 去年は竜太が行きたいって言っていたところを全部チョイスして、プレゼントも渡した。今年もまた同じようなんじゃつまんねえし、どうしたもんかと考えあぐねていたらお袋に声をかけられた。 「ねえ! そういえばそろそろ竜ちゃんのお誕生日でしょ? 今年は私からもお祝いさせてよ! 話したい事もあるし。ね? いいわよね? お誕生日の日、うちに連れてらっしゃい……ちょっと! そんな顔しないでよ。心配しないでいいわよ、夕方からは私仕事だから、邪魔者は消えるからね、竜ちゃんにちゃんと言っておいてよ? お願いね」 すげえ勢いで話すお袋に圧倒されながら強引に約束させられた。 まあ、お袋が一度言い出したら引かないのはわかってるから、もうこれは決定事項だ。 とりあえずは竜太にお袋がお祝いしたいっていう事を伝えて、俺は俺でプレゼントを用意しよう…… サプライズで竜太が驚いて喜ぶ顔も見たかったけどな。 学校でその事を竜太に言うと、すごく喜んでくれた。 「え! 雅さんが僕のお祝いしてくれるんですか? 嬉しいです! うわぁ、楽しみだなぁ」 にこにこしながら俺の横で弁当を食ってる竜太が可愛くて、俺は竜太の頭をくしゃくしゃ撫でた。 「夕方からはお袋仕事だから、ちゃんとニ人っきりにもなれるからな。なんならそのまま泊まってってもいいし」 耳元でそう言うと、竜太は頬を赤くしながら小さく頷き「はい……」と答えた。 ……プレゼント、何にしようかな。 お袋がちょっと邪魔くさいけど、泊まってくれるって言うからいいか。 今から楽しみだ。 文化祭のライブでの事があってからか、竜太は以前より大胆になった。 あまり目立つような事じゃないんだけど、こっそりポケットに手を突っ込んできたり、並んで歩く時は必ずと言っていいくらい俺のブレザーの端を握る。手を繋ぐのはあからさま過ぎるけど、こうやって勝手に服の裾を握ってるのなんてよく見りゃわからないし、そもそもそういう行為がめちゃくちゃ可愛いから正直俺は嬉しかった。 竜太も竜太で、わかってるんだか悪戯っぽく笑うからどうにも恥ずかしくなってしまう。 それに吹っ切れた感じの積極的な竜太の魅力がまた更に上がったからか、ふざけたヤツらがまわりに集まってくるようになった。 俺にもデートをさせろとか、飽きたら俺にくれ……なんて。 俺に向かってふざけた事を言う奴は直接ぶん殴れるけど、竜太は大丈夫なんだろうか? 気をつけて見てはいるけど、竜太はいつもと変わらずにいるから、きっと大丈夫なんだろうな。 突発的にしてしまった事だけど、本当に修斗の言う通りだった…… 竜太の事を考えたらあんな事するべきではなかった。 でも、実はああした事で竜太は俺のもんだってまわりにわからせる事ができたって喜んでいる自分もいる。 独占欲丸出しで、ガキくさくてゴメンな竜太。

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