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竜太の誕生日/お祝いを……

もうじき僕の誕生日。 周さんに言われるまですっかり忘れていた。 昼休み、いつものように屋上でお弁当を食べる。もちろん周さんも一緒。その時に周さんから僕の誕生日の事を聞かされた。 雅さんが僕のお祝いをしてくれるなんて、すごく嬉しい。 僕も雅さんに再婚おめでとうって事を伝えたかったから、何かお祝い考をえないと、と思い今から楽しみでしょうがなかった。 文化祭のライブで、突然周さんに抱きしめられた── その事があってから、僕の中でも何かが吹っ切れたみたいであまり周りを気にせずに周さんとくっつけるようになっていた。 ……そうは言っても、さすがに手をつないだり抱きついたりなんかは恥ずかしくてできないけどね。 ちょっとこっそり周さんのポケットに手を忍ばせてみたり、並んで歩いてる時にブレザーの裾を握ってみたり、ほんの些細な事でも周さんはそんな僕を見て照れ臭そうに笑うんだ。 周さんの方が大胆な事したのに笑っちゃう…… 真司君はあの事があってから益々僕に構ってくるようになった。 「橘先輩って普段どうなの? 竜太と一緒の時はやっぱり雰囲気違うの? デートってどうしてるの?……男同士なのに。やっぱりさ、色々リードしてくれるのは橘先輩なの? エッチな事もすんの?」 親友なんだから色々教えろと言って根掘り葉掘り聞いてくる。 僕は真司君と親友になった覚えはないし、興味本位でそういうのばっかり聞いてくるのは嫌だし大迷惑。モラルってものが無いのだろうか……? 「なんでそういうの他人に言わなきゃいけないの? 面白がってるんでしょ。プライベートな事って友達でもあんまりベラベラ喋るもんじゃないよね?」 いい加減うんざりしてはっきりそう言うと、珍しく真司君はしょんぼりと大人しくなった。 「うん、そうだよな……ごめん。なんか気になっちゃってさ」 ちゃんと言えばわかってもらえる。悪気があってああ言ってくるんじゃ無いのはわかる。でも気になる……か。 別に付き合ってるのが女の子か男の子かの違いだけで、何にも変わらないと思うんだけどな。 「真司君はさ、彼女とデートはどんな所に行くの? 彼女はやっぱり真司君と一緒の時だと雰囲気違うの? エッチな事もするの? 男だし真司君がリードしてあげるのかな? どんな感じなの?」 聞かれた事をまんま真司君に聞いてみた。 彼女なんていないけど……とポツリと溢し、そして真司君は黙り込む。 「ね? 恥ずかしいし、こんな事ズケズケ聞かれたら嫌な気持ちにならない?」 真っ赤な顔をしてしまった真司君にそう聞くと「ごめん……」と言って謝ってくれた。 「今更隠す事ないから言うけど、僕は純粋に周さんの事が好きなんだ……だから周さんが嫌だと思う事は絶対にしたくない。真司君は悪気ないと思うんだけど、ちょっとスキンシップ多すぎだと思うよ。ほどほどにしてね」 真司君はキョトンと首を傾げ「そんなに多いか?」なんて聞いてくる。 本当に無意識なのがタチが悪い。 「真司君の気になる子がさ、知らない男に肩組まれたり手を繋がれてたりするの見たらどう思う?」 「え? そりゃ俺も負けじと同じ事する……なんか嫌だもん」 「でしょ? 周さんだってあんまりいい気はしてないと思うんだ。だからやめてね」 「………… 」 真司君、何か考え込んでるような顔してる。どうしたんだろうと思っていたら、また真司君は話し始めた。 「でもよ、橘先輩だって竜太の肩抱いたりするじゃんか。なんかズリいよ。なんで俺はダメなの? 俺だって触りたいし……」 ……? あれ? なにかおかしくない? 「なんでって。だって僕は周さんと付き合ってるから……てかさ、真司君は僕の事が好きなの?……その…そういう意味で」 ちょっと話が噛み合わない気がして聞いてみたら、ハッとした顔で僕を見た。 「……わかんね。そうなの?」 「………… 」 真司君は一体何を言っているんだろう? 「はぁ? 僕だって知らないよ。真司君、変だよ。僕は真司君の事そんな風に見れないからね! 友達、それ以上でもそれ以下でもないから」 びっくりしたのと、なんだか恥ずかしいのとで、慌ててしまった。 「え……もしかして俺、これは恋? って認識してすぐにフられたのか? なんだよ、竜太もっとためとけよ」 恋とか言って、ふざけてる。 「もう! 揶揄わないでよ。僕もう帰るから。またね」 やっぱり僕は真司君は苦手だ。 そう思って、僕は康介と一緒に帰ろうと隣のクラスへ逃げ込んだ。

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