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体育祭
天気も良く体育祭日和。
開会式の間、やはり周りは一年生の方へ注目していた。
ヒソヒソと喋る声が不愉快に感じる──
去年の僕は理由もわからず変な空気に怯えていたっけ。入江君も感じてるのかな……
僕はちらっと一年生の列に目を向け入江君の姿を探す。確か康介と同じニ組だって言ってたっけ。前から順に流し見て、白いハチマキの列の真ん中あたりに入江君を見つけた。
……いつもと変わらずムスッとした顔。
僕と違って、入江君は何か違和感を感じたとしても動じることはないんだろうなと、僕は少しだけ安心した。
僕の後ろに並ぶ斉藤君が肩を叩き心配そうに声をかけてくる。
「後輩の心配もわかるけど、君自身も気をつけなよ? 無理しちゃダメだよ。代わってあげたい気持ちはあるんだけどゴメンね。棒倒しは僕には無理」
僕の代わりに斉藤君が騎馬戦をやる。
別にわざと決まったわけじゃないんだし、斉藤君がそんなに気を病む事じゃないのにな。
斉藤君は心配性でとても優しい。
「ありがとう。僕は大丈夫だから」
みんなから心配され、うんざりしながら「僕は大丈夫」という同じセリフを、また繰り返し吐き出した。
長い校長先生の話も終わり、三年生の選手宣誓や準備体操も終わると、生徒達は応援席にバラバラと向かう。
席に着いてると、すぐに康介が駆け寄ってくる。そして周さんも……
「ああそうか、入江のやつ康介と同じクラスだろ? もうお前が一人で頑張って白組優勝でいいから」
投げやりな周さんがそう言って康介の肩を叩いた。
「はぁ? なにそれ! 去年は頑張るなって言ってたのに、今年は俺に丸投げっすか? どんだけやる気ねえんだよ。もっと頑張れよ周さんも!」
康介は呆れたようにそう言って僕の方を見ながら話を続ける。
「もう、周さんはいいよどうでも。あ、俺ね、今年も100mと色別リレー、本気で頑張るから。クラス違うけど応援よろしくね」
康介は100mも出るのか……
確かうちのクラスは志音が出るんだっけ。僕らが話してるのに気がついた志音が寄ってきて康介の肩を組んだ。
「康介君100mなの? 俺もだよ。お手柔らかにね」
今年は志音もちゃんと体育祭に参加している。
怪我をしないようにと事務所の社長に念を押されたらしく、100mだけの参加だけど全力でやるよと言って張り切っていた。
「志音が? お前足早えの? そういや走ってんのとか見たことねえや……」
康介がそう言って首を傾げるけど、僕も志音が本気で走ってるのなんて見たことないや。
「そろそろ召集かかるから行っといで。ニ人とも頑張ってね!」
ちょっと楽しみ。
志音と康介はハチマキを締め直し、ニ人仲良く集合場所に走って行った。
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