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棒倒し

午後からのプログラムの騎馬戦や1500mなどが終わり、いよいよ棒倒しの召集がかかった。 「怪我だけは気をつけろよ!」 白組の康介が僕に向かって大きな声で心配してくれる。 「康介もね!」 笑顔で手を振ると、ますます険しい顔をして僕を見た。 なんだよ。 そんな顔しなくたっていいじゃんか…… そんなに僕は心配? 大丈夫だよ。みんなだって一緒じゃん。 「竜太、ほら行くぞ」 真司君に腕を掴まれ、僕も召集場所に走った。 棒倒しは三学年混合で争う。 向こう側には青いハチマキを巻いた周さんと修斗さんの姿も見えた。 僕ら紅組も他の組と同様に円陣を組み士気を上げる。 「お前ら! 一気に攻め落とすぞー! 」 応援団の先輩がこれでもかってくらい大声を張り上げ、みんなで肩を組み掛け声を上げ気合いをいれた。 先程から少しだけ視線を感じる。それなのに、周りを見回しても誰とも目が合わなかった。緊張のせいか落ち着かない。味方も含め、みんなピリピリしている。 「……? 竜太どうかした?」 キョロキョロした僕を不思議そうに真司君が見る。 「ん……いや、何でもない」 なんとなく気持ち悪さを感じていたけど、そんなものの説明のしようもなく、僕は何も言えなかった。 棒倒しはみんな上半身裸で戦う。 僕は筋肉もなくて貧相な体だから、こういうのは正直言って恥ずかしかった。そんな羞恥心があるから、きっといたずらに視線を感じてしまうんだろう。視線を感じるのは自意識が過剰になってるせいだと自分に言い聞かせ、みんなと一緒に僕も声を張り上げ気合を入れた。 グラウンドの四隅に青組、紅組、白組、黄組と棒が立つ。 それぞれの陣地に勇ましく肌を晒した男達が並び、敵の方を鋭く睨む。 僕ら紅組の陣地、両隣が青組と白組。対向に黄組…… 各学年、腕っ節に自信のある人が一先ず両隣を攻める事になっていた。 残りの一年生が棒を守り、三年生が他の組の攻撃手を返り討ちにする。ニ年生は状況を見つつそれぞれフォローに回る。 そんな作戦でいよいよ一回戦目が始まった──

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