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アプローチ

その後の色別対抗リレーでは康介の活躍で白組が勝利したものの、結局総合得点では青組がニ位にかなりの差をつけ優勝。 こうして今年の体育祭は幕を閉じた── 途中で真司君の病院に付き添っていった高坂先生も戻ってきて、数針縫ったけど他は異常ないから心配ないと教えてくれた。 休み明け、学校につくなり僕に暴力を振るおうとした先輩が顔に青痣を作って謝りに教室に来た。 謝罪してくれたのは少しだけ嬉しかったけど、正直言って心からの謝罪には見えなかったから、僕はもうこの先輩の顔も見たくもないし関わりたくないと思った。 周さんが先輩に僕にちゃんと謝るように言ってくれたらしく、先輩の顔の痣はその時についたものらしい。修斗さんからそれを聞いて、僕はちょっとすっきりした。 体育祭が終わってからの一週間、ラッキーボーイに選ばれた入江君に対して、優勝した青組のエントリーした人達がアプローチを始める。 「入江君、大丈夫かな……」 昼休み、いつもの屋上で僕は康介に話しかけた。 「あいつさ、気が強いからアプローチしてくる先輩なんてどうってことないみたいだよ。俺さっき廊下で祐飛に辛辣に言いくるめられてる三年見たし。それに……」 康介が笑いながら修斗さんの顔を見る。 「うん、祐飛君ね、俺も心配だったからさっき様子見に行ったんだよね。そしたら文句言われたよ。何も心配されるようなことはないって。馬鹿にしてるんですか? だって。あれだけ気が強けりゃ心配ないな」 去年僕がこの期間で散々な目にあったのは、僕が気が弱そうだからどんどん押してきゃどうにかなるって思った人が多かったからじゃないか……なんて言われてしまった。 ……失礼な! でも、確かにそうかもしれないな。 「ところで祐飛の奴、誰選ぶんだろう?」 康介が修斗さんと周さんを交互に見る。 入江君が知ってる青組の先輩と言ったら周さんと修斗さんしかいないと思う。 「俺らのどっちかだよな? 周、声かけられた?」 「……いや、ねえな」 どうやら周さんも修斗さんも入江君にはまだ声をかけられてないみたい。 ……どうするのかな? まだ一週間あるけど、知らない人を選ぶなんて事はないよね? 「どっちにしても、選ばれたらデートするなんて事はなさそうだし、デート資金山分けの山分けでパァッと遊びに行こうな。去年ほどじゃないけど、今年も結構エントリーした人数いたみたいだから期待できるね」 修斗さんが楽しそうにそう言った。 放課後、教室に残り志音と真司君と少しだけお喋り。 志音も真司君の頭の傷を心配していた。 「それにしたって酷いよな。竜太君の首絞めたんだって? 棒倒しなんて野蛮な競技に竜太君が出る事になったのだってさ、今思うと不自然だったと思わない?」 志音が言いたい事はよくわかる。 僕みたいな貧弱な人間が挙って棒倒しを勧められたのだって、はっきり言って初めから違和感ありありだった。 あの先輩ももちろんそうだけど、僕の事を不快に思うような人が少なからず存在するんだって事がよくわかった…… 「俺の怪我なんてどうってことねぇし、俺があいつにムカついて飛び込んでったんだからな? 竜太を庇ったからとか、竜太のせいとかじゃねえから気にすんなよ……ほら、だから! 本当それな! そんな顔で俺を見んなよ。竜太のせいじゃねえって何回言えばわかるんだよ……謝んなバカ!」 真司君の頭の包帯を見るたび申し訳ない気持ちでいっぱいになる。 でも僕が謝るたびにこうやって真司君に怒られるんだ。 ……ごめんね。ありがとう。 僕は心の中でまた謝った。

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