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こんなの妬かない方がおかしい
カラオケ店の入っているビルの前のファーストフードに入り、窓際の席で僕らはニ人で並んで座る。
直樹君はさっきから僕のことを揶揄ったり落ち込んだり、絶賛情緒不安定中……
「さっきカラオケに入ったばっかだし、そんな早くは出てこないよ?」
そわそわしながら「もうそろそろ……」と立ち上がろうとする直樹君をなんとかまた座らせ、飲み物を勧めた。
「俺、前に祐飛とカラオケ行こうとしたんだけどさ、歌うの嫌だって断られたんだよなぁ。周さんの誘いなら行くのかよ……なんだよもう……」
……また独り言。
本当に気になってしょうがないんだね。
「ねぇ、僕らもカラオケでもする? 気晴らしにさ、パーっと遊ぶ?」
このまま周さんたちを尾行していてもきっと直樹君はこの状態のまんまだ。
精神衛生上よろしくない……
尾行もやめたほうがいいのかな? と思って、僕は直樹君に提案してみた。
「なんで? 俺らもカラオケ行っちゃったら祐飛達出てくるのわからないじゃないっすか。だめだよ……こんな時に気晴らしなんかしなくていいです」
直樹君はフンッと鼻を鳴らしてコーラをストローで啜った。
カラオケに入ってから一時間ほどして、周さん達が店から出てくるのが見えた。
「あれ? なんか思ったより早かったですね」
拍子抜けしたって顔で直樹君が言い、早く早く! と急かされながら僕らも店を後にした。
人混みの中で、ニ人並んで歩く。
時折周さんが人の波に当たらないように入江君を気遣い自分の方へ引き寄せる。いつものさりげない一連の動作が僕の心にチクっとトゲを刺した。
周さんはきっと無意識。
でも本来なら僕に向けられるその優しさが他の人に向いているのを見るのはやっぱり辛い。
周さんのそんな行動が直樹君にもわかったらしく「凄えな……」と小さく零した。
「周さんてさ、すげぇ優しいっすよね? あんなぶっきらぼうで怖え顔してんのにさ……祐飛助けてもらった時も凄いそう思った。ああいう男らしいの憧れるなぁ」
周さんが褒められるのは嬉しいけど、ちょっと複雑。
そのまま気付かれないようについて行くと、買い物をするのか周さん達は近くのショップに入ってしまった。
「この店狭いから入るの無理だ……」
外からチラッと中の様子を見ると、余計に胸が痛くなる。
もう、帰りたい……
「なんだよ祐飛すげぇ楽しそうな顔してる。周さんに服見てもらってんのかな? 周さんもさ……あんな優しい顔すんのな………うぅ」
入江君があんな穏やかで楽しそうな顔をしてるのも僕は見たことないし、周さんだって僕と一緒にいる時みたいに優しい顔をして入江君の事を見ている。
こんなのやきもち妬かないほうがおかしいよ。
「………… 」
「竜太君? どうしたんですか?」
「……もう帰りたい。僕、嫉妬でどうにかなっちゃいそう」
正直にそう言うと、直樹君はシュンとしてしまった。
「なんか……付き合わせちゃってごめんなさい。俺、昼メシ奢ります。ね、もう行きましょ。俺ももういいから……」
「……うん」
いたたまれない気持ちになった僕は周さん達の尾行をやめて、直樹君と一緒にファミレスに向かった。
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