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入江と一日デート

体育祭が終わり、ラッキーボーイの入江が選んだのは俺だった。 一週間の期間を終え、放課後俺のいる教室まで迎えに来た入江は言いにくそうに「よろしくお願いします」と頭を下げた。 写真部の部室までニ人で出向き、金を受け取る。 エントリーした人数により決まった賭け金を受け取る。今回は三万弱だ。受け取った金をその場で山分けしようと封筒から取り出すと、入江に止められてしまった。 「あ……金は橘先輩が持っててください。デートは今度の休みでいいですよね?」 「……?」 「橘先輩? 聞いてます?」 いやいやいや…… 「金、ここで山分けして終わりだろ?」 まさかの事態に混乱する。 入江と俺がデートするのか? 「え? せっかくだからデートしません?」 ……言ってる意味がわからない。 こいつ俺が竜太と付き合ってんの知ってるよな? 「いや、それはダメだ。竜太がいるし……」 そう言うと「はぁ?」ってムカつく顔をされた。 「別に橘先輩に俺と付き合ってくださいって言ってるわけじゃねえし……渡瀬先輩と付き合ってんのだって百も承知ですけど? ……デートって言うから変なんですよね? 友達や後輩と出かけたり買い物したりっていうのは別におかしくないでしょ? ちょっと相談したいこともあるんで、今度の休み、俺と会ってもらえませんか?」 なんかちょいちょいムカつく言い方だったけど、相談したい事っていうのも気になるし、しょうがないから俺は入江と出かける事にした。 帰宅後、案の定竜太に話すと思いっきり「嫌だ!」と言われる。 ……だろうな。 入江が俺に相談事があるってことを言えば、きっと納得するんだろうけど、わざわざ俺とニ人になれるあの場で言ってきたって事は、あまり周りに言われたくねえんだろうなって思って言えなかった。 ごめんな── でもデートじゃねえし。 心の中で謝りつつも、駄々っ子のようにやきもち妬いて嫌だ嫌だと言ってる竜太が可愛くて、嬉しくてにやけてしまった。 不貞腐れてる竜太を見かねて康介が連れ帰ってくれた。 俺の家に残った修斗には、一応入江の奴が相談事があるらしい事を伝える。また航輝と海成絡みじゃなきゃいいけど……と、俺も少し気になっていたことを修斗も呟いた。

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