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恋人同士でする事
駅近くで待ち合わせをする。
別に電車乗って遠出するつもりもないけど、ここが一番わかりやすい場所だから……そう思ってここを待ち合わせ場所にした。
それなのに待ち合わせの時間より十分程遅れてきた入江は悪びれる様子もなく、待ち合わせ場所がよくわからなかったと文句を言った。
……生意気な奴。
だけど正直でストレートに物を言うところは嫌いじゃない。
「橘先輩、今日はありがとうございます」
改まって入江に頭を下げられる。そんなお礼を言われるようなことでもないし「いや、いいよ別に……」と言いながら、これからどうするかを聞いた。
言っていた「相談」の事も気になるし、とりあえずはカラオケとかで二人で話しができるところがいいだろうと思うんだけど。
「あの……男二人でデートって、てか好きな奴と二人きりで出かけるのってどんな感じなんすかね? こういう時ってどこに行くのがいいんですか?」
……?
そんなの行きたいとこ行きゃいいじゃん。そう思ったけど、真面目くさった顔でそんな事聞くもんだから、あまり邪険に扱うもんじゃねえなって思いとどまった。
「とりあえずさ、カラオケでも行く? メシ食うのもまだ早いし……なんか相談事もあんだろ? 他人の目のないとこでゆっくり聞くぞ」
そう言うと、きょとんとした顔をして何かに納得したのか小さく頷く。
「そっか……カラオケって言っても別に歌わなくたっていいんですよね……」
近くにカラオケ店があるからそこに向かった。
俺はこうやって歩くのは竜太と二人でか友達としかないから、なんか変な感じだ。まぁ友達っていっても修斗たちくらいしかいないけど……
受付を済ませ、部屋に入る。
急に黙り込んでしまった入江に気を使って、とりあえず何か歌っておくか? と聞いたら全力で嫌がられてしまった。
……そんなに怒ることねえじゃん。
飲み物だけ頼んで、入江が話を切り出すのを待ってみる。するとすぐに恥ずかしそうに話し出した。
「あの……橘先輩は普段恋人とデートする時って、どんな所行ったり……どんな事したりするんですか?」
恋人……とか言って。
「竜太と? 竜太が行きたいっていう所だったり家でのんびりしたり……その時々で行きたい所行ったり、したい事してるぞ? 竜太は男のくせに甘いもん好きだからな、ケーキ屋とか女が行きたがるような所も二人で行くな。女ばっかでちょっと気不味いけど、竜太が嬉しそうだから俺は何でもいいんだ」
嬉しそうにケーキを頬張る竜太の顔が浮かんで、自然と笑顔になる。
……てかさ、さっきからこいつ、人のデート事情ばっか聞いてきて何が言いたいんだ?
「……なぁ、相談事って何なんだ?」
航輝と海成絡みかと心配したけど、なんか違う気がする。
俺の事をジッと見つめ、何か言いたそうな顔をしている入江を俺も見つめていると、みるみる顔が赤くなっていった。
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