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買い物とプレゼント
「あ……あとすみません。買い物付き合ってもらえますか?……過ぎちゃったんだけど直樹の誕生日、何かプレゼントしてやりたくて」
なんだよ。
なんだかんだ言ったって、それもう付き合ってるみたいなもんだよな。
「いいんじゃね? ほんとお前がこんな事言ってるなんてわかったら直樹どんな顔すんだろな。おもしれーだろうな……」
「ちょっと! 絶対に言わないでくださいよ!」
終了時間までまだ少しあったけど、カラオケから出て近くのショップへ向かった。
入江は二人きりでゆっくりと話したからか、今までよりもずっと打ち解けた感じで、歩いてる間もやたらお喋りになっていた。
聞いてると直樹の話ばかり……
あんなんで頼りないところもあるけど、凄く優しくていい奴なんだと……いや、直樹は入江の事に関してなら頼りにしてもいい、男前だと思うぞ。
話に夢中で周りがあまり見えてないのか、何度か人にぶつかりそうになる。竜太もそうだけど、小柄な男は注意力散漫なのかな?
竜太は今頃なにしてるだろう。
俺もこないだバイトの給料入った事だし、竜太に何か買っていこうかな。でも竜太には物よりもスイーツかな? 後でケーキ屋にも寄ろう。
入江に連れられて店に入る。
少し狭い店内に、洋服から小物まで沢山の商品が所狭しと並んでいた。
「こんな所に店なんてあったんだ。知らなかった……てかなかなかいいじゃん、俺もこういうの好きだな」
店内をぐるっと歩きながら、竜太にはなにが似合うかな、なんてぼんやりと考える。入江は既に目星をつけていたのか、店に入るなり奥にある幾つかのティーシャツを手に取り眺めていた。
「……それ? なんで? なんか直樹ってこっちっぽくね?」
ちょっと俺がイメージしてる色味と真逆のを手に取っていたから、意見しながら入江の持ってるのと色違いを前に並べてみる。
「うん、多分直樹に似合いそうなのは橘先輩が持ってるその色なんですよね……」
入江が手にしてるのは暗い地味目の色。
直樹は明るい色の方が似合いそうなのに、それをわかっていてあえてのその色?
「直樹は少し暗い地味なのが好きなんですよ。大人っぽいからとか言って。でも絶対明るい方が似合うのに、自分では似合わないって思ってるの……だから俺がよかれと思ってプレゼントしてもきっと喜ばないかなって思うから」
直樹の事を思い浮かべてるのか、いい表情で入江は話す。
「でもよ、自分じゃ絶対に買わないんだろ? ならお前が似合うと思うやつ買ってやった方がいいんじゃねえの?」
俺がそんな事言ったもんだからまた悩み出してしまい、待たされてる間ちょっと退屈になってしまった。
もうどっちでもいいし……腹も減ってきたし。眠いし。
しばらく入江の買い物を待っていると、やっと買ってきたみたいで慌てて俺の所に戻ってきた。
「結局直樹に似合いそうな色のに決めました! ありがとうございます。腹減りましたよね? ちょっと行けばファミレスあるし、飯行きましょう。あ、そういえばさっき渡瀬先輩そこ通りましたね」
……??
「へ?? なに? 竜太いたの? なんだよ! 言えよ!」
「いや……先輩俺の買い物待ってる間、店の椅子に座って爆睡してたじゃん。俺、声かけましたよ? 渡瀬先輩いましたよ〜って。寝ながらフンッて迷惑そうに鼻鳴らしたの誰です?」
マジかよ……
たまたま通りがかったのかな?
クソッ、後から会うつもりではいたけど。
「竜太ひとりだった? なんでこんなとこにいるんだよ」
「俺も窓越しにチラッと見ただけだから……知りません。さっさと行っちゃうし。ま、とりあえず飯行きましょ」
竜太の事が気になったけど、入江に促され俺たちはファミレスへ向かった。
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