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直樹君とランチ
直樹君に連れられて、近くのファミレスに入った。
僕が元気が無くなってしまったからか、直樹君の口数も減りなんだか変な雰囲気になってしまった。
「あ……の、ごめんね。なんか僕のせいだよね?」
席に案内され椅子に座りながら話しかけると、直樹君は首を傾げる。
「別にさ、友達とかと出かけたりもするし……深い意味もないってわかってるんだけど、やっぱり見ちゃうとダメだね。僕は心が狭いみたい。雰囲気悪くしてごめん」
なぜ僕が謝っているのかよくわかっていなさそうな直樹君にそう言うと、慌てて否定された。
「待って! 俺のせいだから! 謝らないでください。竜太君悪くないです! 俺が竜太君誘ったから……なんかゴメンなさい。元気出して……大丈夫ですって。ね? 周さんは竜太君の事が好きなんだから。ほんと元気出して。ね?……じゃないと俺が周さんに怒られますって」
テーブルの上に体を乗り出して、慌てて僕の事を心配してくれる直樹君が可笑しくてクスッと吹き出してしまった。そんなに必死にならなくてもいいのに。
「よかった。やっと竜太君笑ってくれた!」
パアッと笑顔を浮かべた直樹君もやっと腰を落ち着かせた。
「じゃ、なにか食べましょ。 俺が奢るからね、遠慮しないでください! 今日は付き合ってくれてありがとうございます」
付き合ってくれて……と言っても、僕も周さんと入江君の事が気になってたからちょうどよかったんだ。
「ううん、こちらこそ……」
直樹君だってさっきまで落ち込んでたのに、もうすっかり元気になってメニューを開き、ああだこうだと独り言を言っている。遠慮するなと言われたけど、なんか胸がもやもやしちゃって食欲がわかなかった。
本当は何もいらないくらいなんだけど、とりあえずサンドイッチと紅茶に決めた。そしたら、やっぱり「遠慮してる!」と怒られてしまった。
「俺、ハンバーグかステーキにしようか迷ってんのに、竜太君それだけ? ありえないっしょ。イラついてる時って食欲わきません? 俺めっちゃ食うよ?」
どうやら僕は直樹君とは真逆みたいだ……
「あ、でも甘いもの食べたいかも」
そう呟いたら、また僕の前にメニューを開いてくれた。
店内はそんなに混んでなく、頼んだものもすんなりとテーブルに運ばれてきた。結局直樹君はハンバーグにしたみたいで、テーブルに届くなり手をパチンと合わせ、いただきますをしてモリモリと食べ始める。僕はそんな直樹君の姿を眺めながら、もそもそとサンドイッチを頬張った。
「でもさ、竜太君はいいですよね……周さんとよくデートするんでしょ? 映画見たり買い物したり、こうやって一緒に食事したり」
あっという間に完食した直樹君が、ジュースを飲みながら僕の顔を見る。
「うん、でも直樹君だって入江君と遊んだりするでしょ?」
「そりゃ俺から誘えば遊んでくれるけどさ……デートって感じじゃねえもん。ただの友達だし。やっぱり羨ましいです」
シュンとしてしまった直樹君になんて声をかけてあげたらいいか困ってしまっていると、僕が食後に頼んでおいたデザートが運ばれてきた。
「……マジか! こんなの男で食べる奴初めて見た!」
驚愕の表情を見せ、直樹君は僕の顔とテーブルの苺キャラメルパフェを交互に見る。
「すげぇな! パフェデカっ!……ねえ見てこれ竜太君の顔くらいあるよ? ほんとに一人で食うの?」
驚いてたと思ったら今度はケラケラと笑ってる。
そんなに笑うことないのに……
「直樹君も食べる?」
直樹君が元気になったのはホッとしたけど、ちょっとバカにされてるようでムッとしながらそう聞いてみると、嬉しそうにウンウンと頷いた。
「こういうのってたまに食べてえなって思うけど、まさか注文できないし、食べきれないし、竜太君ほんと可愛いっすね。抵抗なく頼めるんだもん。しかもこういうの似合ってるし。いやぁ〜、和むわ」
折角ひと口あげようと思ったのに、やっぱりバカにしてるじゃん……
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