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ヤキモチの応酬

僕のパフェをテーブルに体を乗り出すようにしてスプーンで掬って嬉しそうに食べ始めた直樹君を見つめる。 ……片思い、辛いんだろうな。 側から見てると仲よさそうだし、直樹君も楽しそうにしてるけど……さっき見せたあの表情がとても印象深かった。 入江君には直樹君の気持ちは伝わってると思うんだけど。もっと距離、縮まるといいね…… 「うまっ! うまっ! 」 ひと口頂戴とか言って、油断していたら結構食べられてしまった。 「あ! ちょっとダメだよ。苺は僕が食べるんだから……!」 楽しみに取っておいた苺を直樹君がフォークで突き刺してるのに気がつき慌てて止める。 「へ? あ……ごめんなさい。はい…… 」 直樹君がフォークで突き刺した苺をおもむろに僕の目の前にスッと差し出してきたから、思わずパクッとそれに食いつく。 「んっ……甘い! 」 僕は口いっぱいに広がる甘くて水々しい苺を堪能できてほっとする。ちょっと大きかったその苺を口の中で暫くモグモグしていると、直樹君がやっぱり僕の顔を見て笑った。 「竜太君、どんだけ可愛いんだよ。周さんが夢中になるの俺わかる気がする。それ無意識ですよね?」 ……? 「よくわかんない事言ってないで、ほらパフェ返して。僕も食べたい……」 直樹君からパフェを取り戻し、食べようとしたら背後から誰かに肩を叩かれた。直樹君の顔を見ると、目をまん丸くして声も出せずに驚いてる。 「なにしてんだよ。竜太……」 振り返ると、複雑な表情をした周さんと入江君が立っていた。 「周さんっ!」 「おい……今何してた? 直樹…… 」 直樹君は目を逸らして気まずそうに黙ってしまった。 「なんでお前が竜太と一緒にいるんだよ!」 突然の周さんの大声にちょっとびっくり。 てか、いきなり来て何? 不機嫌丸出しで直樹君にあたってる。 「周さんこそどうしたんですか? デートはもう終わり? 食事しに来たの?」 周さんが感じ悪くて、僕は嫌な気分になってしまった。 「僕らはお昼ご飯食べてるだけですけど」 「………… 」 でも僕の方がもっと感じが悪い── こんな態度、ダメだってわかってるけど止められない。 だって、周さんと並んで立ってる入江君がお似合いに見えてしまって嫌だった。 そこに立っていいのは僕なんだよ…… わかってるよ。 焼きもち丸出しで不機嫌なのは僕の方。 でも引っ込みがつかなかった。 「いつまでもそこに突っ立ってないで、座ったらどうですか? これから食事? 僕らは今終わったからもう帰ります」 僕はオロオロしてる直樹君に目配せして席を立った。 「え……ちょっと、竜太君……いいの?」 席を立った僕を見て慌てて直樹君も席を立つ。 「………… 」 なんでこんな所にいるんだよ……っていう周さんの態度や、直樹君に対する嫌な言い方。それ以上に、焼きもち妬いて周さん達を尾行していたなんて事実が恥ずかしくて、僕は周さんの顔を見ていられなかった。

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