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酷いお仕置き

ベッドの上にちょこんと乗り、買ってきたケーキを一人嬉しそうに頬張っている竜太を遠目に眺める。 竜太は黙々とケーキを食べお茶を飲み、テーブルの上にカップを置くとそのままの体勢でテレビをつけた。 竜太はまるで俺がここにいないかのように振る舞っている。 目も合わせてくれない…… コロンとベッドに横になり、竜太はテレビを見始めた。 「………… 」 竜太は知らんぷりを決め込もうとしてるんだろうけど、ずっと俺が見つめているのが気になるのか、チラチラとこちらを見ては何となくそわそわしている。 「なぁ〜、竜太。竜太ってば。いつまでも怒ってんなよ……」 何度か声をかけてみたけどやっぱり返事もしてくれない。 ……せっかくホテルに来てるのに、本当に何もしないつもりかよ。 「なぁ〜、いちゃいちゃしようぜ。竜太、ごめんね。許してよ……触らせてよ」 そう言うと、竜太は俺の方を振り向き、ジッと見つめる。 「……ね? もうやめよ?」 「やめよ? じゃありません……これは僕の事をバカにした周さんへのお仕置きなんです!」 へ? お仕置きって……? 「おい、俺は別に竜太のことバカにしてたわけじゃねえよ? 可愛いなぁって思ってただけだぞ?」 「同じ事です!……僕がやきもち妬いて周さんと入江君のデートを覗き見してたの喜んでたんだ。だから僕に見せつけるように入江君のこと歩きながら人混みから守ってあげたり優しい事してたんだ」 ……?? 「はぁ? そんな事してねえよ? ……それに竜太がいたの知らなかったし。もう、どんどん頭ん中、間違った妄想が膨らんでんぞ? 俺が竜太以外にそんな風にするわけねえだろ? わかってんだろ? もういい加減にしろ!」 「………… 」 「ほら……竜太、抱かせろよ」 俺は涙目で怒ってる竜太に近づくためにそっとベッドに乗った。 「竜太……」 両手を前に出し、抱きしめようとしたら竜太はハッとして後ろに下がった。 「ダメです! 触らせないって言ったでしょ! エッチなこともさせませんっ!」 俺の手をパチンと叩き、竜太はぷりぷりとバスルームに行ってしまった。 う〜ん…… どうしたもんかな。 取り残された俺はベッドの隅に腰掛け、ぼんやりとバスルームの方を眺める。 シャワーの音、バスタブに入りパシャパシャやってる音…… いつもなら何とも思わないこの待ち時間が、物凄く長く感じた。 しばらくすると、ホテルの寝衣だけを身に纏った竜太が頭を拭きながらバスルームから出てくる。チラッと横目で俺を見ると、やっぱり何も言わずにベッドに上がった。 端に座る俺から一番遠い位置にゴロンとうつ伏せになり、またテレビを見始める。 ……とことん無視なんだな。 「………… 」 うつ伏せに寝ている竜太がたまに足をぷらぷらとさせるのが目にとまり見てみると、尻が半分寝衣からはみ出ていた。 俺と色違いのお揃いのパンツ…… 可愛いお尻に触れたくて、そっとそこに手を伸ばした。 でも案の定、ぴしゃりと手を叩かれ睨まれる。 「周さん、触らないでって……そんなに僕に触りたいの?」 当たり前だろうが…… 目の前に竜太がいるんだぞ? せっかく二人きりになれたっていうのに。 「僕に触りたい?……エッチな事、したいですか?」 「うん……なぁもういいだろ? 許してよ」 俺がそう言うと、ニヤッと笑って竜太は起き上がり、ベッドの背に寄りかかるように座り直した。 「許しませんよ……お仕置きなんですから。周さんはずっとそこで一人で我慢しててください」 「………… 」 ん? 竜太君……? 「どう?……周さん、僕に触れられなくて辛いですか?」 俺に向かって触るなと言いながら、竜太は着ている寝衣の胸元をはだけさせジッと俺の事を見つめた。そのまま膝を立てるもんだから、隙間から竜太の股間がチラッと見える。 ……これは。 これは何だ? 俺は何を見せつけられてるんだ? 艶かしく立てた膝を、軽く閉じたり開いたり…… そうしながらも俺から目をそらさずに、煽ってるように竜太は瞳を潤ませる。 やべ…… 竜太がエロい事になってるよ…… 「ねえ……許してほしい?」 顔を上気させた竜太がいやらしく吐息を吐き、自分の胸元を手で触りながら聞いてくる。 ……もしかしてさ、もしかしなくてもこれ、俺に対するお仕置きのつもりか? いやいやいや、お仕置きになってないから! むしろ俺、喜んじゃってるから! ご褒美かな? 普段恥ずかしがりな竜太が大変な事になってるよ…… 幸いなことに、ちっともお仕置きになってないって事に気がついてなさそうだから…… もう少しだけ黙っとこ。

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