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不穏

周さんは先に下駄箱のところで待っていてくれた。 大急ぎで周さんの元へ駆けつけ待たせたことを詫び、矢継ぎ早に今見たことを周さんに話した。 「どうしたんでしょうね、志音も最近学校に顔出さないし……何か聞いてます?」 気になってしょうがないから周さんに聞いたんだけど、周さんはあまり興味がないのか、怠そうに「知らねぇな」と言うだけだった。 「もー、周さんてば……ほんとどうしたんだろう。病気かな? 大丈夫なのかな?」 「竜太、心配しすぎ。代理の奴もすぐに戻るって言ってんだろ? 風邪でもひいたんじゃねえの?……それよりさ、今日は時間大丈夫なんだろ? デートしようぜ」 周さんは僕の肩を抱くようにして、耳元で囁く。 ……ふふ、ちょっと恥ずかしい。 先生の事が気になったけど、周さんの言う通りあまり心配することじゃないのかもしれない。でも夜に志音にメールをしてみよう。そう思いながら僕は周さんと放課後デートを楽しんだ。 家に帰り志音に連絡を入れてみる。でも返信がすぐに来なかったから僕はお風呂に入った。 ……まぁ、志音は普通の高校生とは違って忙しいから。 気にすることはない。 忙しくて連絡できないんだよね? 先生は風邪でも拗らせちゃったかな? 代理の先生もじきに戻るだろうって言ってたし…… でも風邪くらいで代理の先生が来るの? あ……もしかして志音が看病をしてるのかな? きっとそうだよね。 先生の事が気になってしまって、お風呂に入ってる間中もその事ばかり考えてしまった。 お風呂から出て、ご飯を食べる。その間も先程のメッセージの返信がこないか気になってチラチラと携帯を眺めていたら「食事中にやめなさい!」と母さんに怒られてしまった。 寝る前にもう一度携帯を見ると、一通の未読のメッセージがあった。慌てて開いて見た画面には、志音からのメッセージ。『怪我で入院してたけどもう大丈夫だから』とひと言だけ書いてあった。 次の日学校に行くと志音が既に教室にいて、真司君と楽しそうに会話をしている。 「志音……おはよう。大丈夫?」 一緒にいた真司君はキョトンとしている。 一見楽しそうにしている志音だけど、僕の目にはちっとも楽しそうに見えなかったから。 「ん? 何が?……大丈夫だよ。朝から俺がいるのなんか久しぶりだよね」 「あ……うん。お仕事忙しかったの?」 いつもの他愛ない話── でもなんとなく志音が僕の事を避けているのがわかって、これ以上は何も聞けなかった。

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