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余計なお世話

修斗さんの部屋に通され、僕はプリンをいただく。修斗さんの部屋は凄くお洒落で落ち着いていた。余計な物がなく、黒を基調とした部屋はちょっと志音の部屋に似てるかも。綺麗に片付いてて、ごちゃごちゃと散らかっている康介の部屋とは大違いだった。 「……あの、プリンご馳走でした」 「美味かったでしょ? 涙も乾いて引っ込んだ?」 「………… 」 「とりあえずさ、センセーは大丈夫なの? こないだ保健室行ったらさ、代理の先生いたからびっくりしたよ。なんか具合悪いって言ってたけど……それほんと?」 真面目な顔をして聞いてくる修斗さんに僕は頷く。 「ほらさ、志音も休んでるし、センセーだって今までこんなことなかったからさ、もしかしてニ人の関係がバレちゃったのかな? って心配だったんだよ。ま、そうじゃないならよかった……けど、ならなんで竜太君泣いてたのさ……センセーよっぽど具合悪いのか?」 そっか…… そんな事考えもしなかった。そうだよ、同じ学校の保健医と生徒なんだよね。バレてしまったらどうなっちゃうんだろう。 「あ……先生怪我してて。でももう退院してるみたいだし大丈夫です」 修斗さんにそう伝えたものの、やっぱり僕の顔をジッと見つめてる。 「……別に詮索しないけどさ、竜太君は毎度毎度ほんと優しいよね。志音と会ってあんな悲しそうな顔して泣いちゃってさ。あんまり他人に感情移入するのも考えものだよ? どんなトラブルでも、結局のところ解決していくのは本人達なんだから」 「………… 」 わかってるけどさ……ほっとけないじゃん。 それにあんな事態、僕だったら辛すぎて一人じゃ解決できないよ。 「あ! ほらぁ、泣かないでよ。ゴメンね。竜太君優しい上にほんと泣き虫だな……大丈夫? 俺話聞くよ? 誰にも言わない。聞くだけなら出来るけど……」 僕の前に箱のティッシュを置いてくれるのが可笑しくて思わず笑ってしまう。そこから一枚ティッシュを取り出し、鼻をかんだ。 もうここまできたら黙ってるのもおかしいと思い、僕は修斗さんに志音の事を話してみることにした。 最後まで僕の話を聞いてくれた修斗さんは、また僕の頭を優しく撫でる。ちょっと子ども扱いをされてるみたい。 「これは辛い話だね……竜太君、自分に置き換えて考えちゃったんでしょ……でもこんな経験普通に生きててそうそう無いから。記憶無くなるってさ……」 そうなんだけど…… やっぱりなんとかしてあげたいって思ってしまう。 「でも俺は志音の気持ちよくわかるなぁ。それでもよくセンセーに付き添ってたよ。凄いじゃん、偉いと思うよ……俺なら忘れられたってわかった時点でもう別れちゃうと思うな〜」 「え……?」 「あ、今竜太君、なんで? って顔した。普通そうでしょ。また好きになってもらえる自信なんてないし、記憶が戻る保証もない。どのくらいで戻るのかだってわからないんだろ? 結局は俺は自分が傷つくのが怖いんだよ……うん、逃げるね俺も」 誰よりも自信がありそうな修斗さんなのに、寂しそうにそう話す姿は意外だった。 「人それぞれさ、考えも違うし……そもそも志音とセンセーの問題! 竜太君が気を揉む事ないって。そう、余計なお世話って事だよ。そっとしておいてあげな。友達ならさ、見守ってあげるのも大切だと思うよ」 肩をポンと叩かれ、周さんを迎えによこすから待ってなって言われた。 目の前で携帯を弄る修斗さん。 目まぐるしく動く指先を僕はぼんやりと見つめた。

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