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お迎え
お茶をもらい、飲みながら修斗さんと喋る。修斗さんは僕と喋りながらもメールを打ってるのか、するすると指先が画面を滑っていた。いつものことながら、器用だなと思いながら僕はその指先を見つめる。
あ、そういえば。
「ねぇ、修斗さん……最近忙しいんですか? 康介が修斗さんが遊んでくれないって寂しがってましたよ。連絡もなかなか取れないって言ってたし」
康介がしょんぼりしてたっけ。
僕の話が聞こえてんだか聞こえなかったのか、ちょっとの沈黙……
チラッと目が合い「それも余計なお世話 」と言われ笑われてしまった。
なんだよ、余計なお世話って。
「すみません……でも康介かまってほしいって言ってましたよ。寂しいって…… 」
なんだか修斗さんらしくない素っ気なさで携帯の画面に視線を落としたまま、周さんが到着したことを教えてくれた。
「周もう着いたって。下で待ってるから早く出てこいってさ……竜太君また学校でね」
なんとなく追い出されるような感じで僕は修斗さんの部屋を出た。
エレベーターで一階のエントランスまで降りると周さんが不機嫌そうな顔をして立っている。
「……なんで修斗んちなんだよ。帰るぞ」
グイッと肩を抱き寄せられた。
「また泣いてたの? まったく。俺以外の前で泣くなよ。みんな竜太に惚れちまうじゃん…… 」
周さんの言い分に思わず吹き出し笑ってしまった。
「怒ってるかと思ったら。なにそれ可笑しい……僕泣いてないですよ」
「嘘だね。志音と高坂の事でめそめそ泣いてただろ?」
「………… 」
ちょっと! 修斗さん教えちゃったの?
周さんにどこまで知ってるのか聞いてみたら、一から十まで話は筒抜けだった。
「別に言いふらしたりもしねえし、二人の問題なんだから口出しもしねえよ? そんな顔すんなよ」
そうなんだけどさ……
それにしても。
「あの短時間で修斗さん周さんにその内容のメール送ったの?」
僕と談笑しながら適当に携帯弄ってたようにしか見えなかったけど……
「あぁ、あれ体の一部だからな。目瞑ってたってメールくらい出来るよ」
そう言って周さんは笑った。
周さんは僕の家まで送ってくれた。
僕だって男なのに、いつも女の子みたいに扱ってくれる。
送ってくれなくても大丈夫だと言った事もあるけど「心配だし、それにぎりぎりまで一緒にいたいから」と言われて納得した。
僕も周さんと一緒にいたいからやっぱり嬉しい。
「修斗にも言われたと思うけどさ、あんまり他人の事で気を揉むのやめろよ? 心配だけどな。でも俺達がどうにか出来る問題じゃねえし……てかさ、俺の話してもいい?」
住宅街に入り人も少なくなってきたからか、周さんは僕の手をキュッと握る。
僕もまわりから繋いだ手が見えにくくなるように、周さんにくっつくように寄り添って歩いた。
「もうじきお袋引っ越すからさ……俺、独り暮らしになるんだよね〜」
握った僕の手をにぎにぎとしながら、周さんはにっこり笑ってそう言った。
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