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「ひとり暮らし?」 僕の頭の中は一瞬にして周さんと二人で生活しているイメージが浮かんでしまった。 ……浮かれちゃって、僕どうかしてる。 「でよ、お袋がさ……前にも話したと思うけど、竜太の母ちゃんに会いたいんだって。ほら、俺しょっ中飯とか食わせてもらってんじゃん? それのお礼も言いたいのと、付き合いも長くなるだろうしきちんと挨拶がしたいって。面倒くせえよな」 雅さん、そんなこと考えてくれてるんだ…… 「周さん、面倒くさいなんて言っちゃダメです。母さんも会いたいって言ってたし、きっと喜びます。いつでも大丈夫ですよ……周さんも一緒に来るんですよね? また僕チーズケーキ作っちゃおうかな」 「おっ、楽しみだな」 周さんと別れ、僕は早速家に帰ると母さんに雅さんのことを話してみた。 思ってた通り喜んでくれて、改めて連絡をして近々来てもらうことになった。 次の日の学校、志音は朝からちゃんと来ていて授業を受けている。 クラスメイトとも気さくに明るく話してはいるけど、昨日の様子を見てしまったからかどうにも痛々しく感じてしまう。 勿論保健室には行きそうにない…… 「竜太君さ、なんか言いたそうな顔してさっきから俺の事ずっと見てるよね?……そういうのやめてくんない?」 休み時間、真司君とお喋りしていたら志音に文句を言われてしまった。 正直、真司君のお喋りなんて全然頭に入ってこなくて志音の事ばかり気にしていたから。 ふいっと不機嫌丸出しにした志音が廊下に出て行く。 「なに? 志音怖えな……そういえば朝から一緒にいないけど、喧嘩でもしてんの? 大丈夫か?」 志音のあからさまな不機嫌顔に真司君も驚いたようで、僕のことを心配してくれた。 「ううん、喧嘩なんてしてないから大丈夫だよ」 そう言いながら、気にしすぎて志音をイラつかせてしまったと僕は反省した。 廊下に出て行ったってことは保健室に行ったのかな? もう高坂先生は来てるんだろうか…… ……行ってみようかな? あ、でも志音も保健室ならまたウザいって思われちゃうからやめておこう。僕も出て行きたいのをグッと堪え、またべらべらと煩いくらいに楽しそうにお喋りする真司君の話に付き合った。 適当に相槌を打っていたら、何やら真司君と二人で遊びに行く話になっていて慌てて断る。 「いや、ごめん都合悪いから……てか何で僕と二人で? だめだよごめんね」 「へ? 今、うんって言ったじゃん。もう! 俺の話ちゃんと聞いてた? ぼんやりしちゃってさ。なんだよ、竜太とデートできると思ったのに……ちぇっ」 「………… 」 真司君は文化祭の時から言動がちょっとおかしい。 合コンに誘ってきたり、今みたいに僕の事をデートに誘ったり…… 相変わらずのスキンシップ過多で、たまに周さんに睨まれている。 「あれ? 康介来てるよ」 真司君に言われて廊下を見ると、康介が僕の方を見て呼んでいた。 ……ちょっと助かった。 僕は真司君から離れ、康介の方へ向かった。 「竜……今日修斗さんと会った? 学校来てたかな? ……なんかさ、気のせいかもしれないんだけど……俺、避けられてるかもしれない」 廊下に出ていくと、珍しく深刻な顔をした康介が元気なく話す。 へ? そんなわけないじゃん。 「修斗さん、今日は会ってないけど僕、昨日会ったよ? 避けられてるって……気のせいでしょ。最近忙しいみたいだし……」 昨日は余計なお世話なんて言われたけど…… 康介元気なくなっちゃってんじゃん。修斗さん何してるんだよ。 「昨日? 修斗さん俺のメールには返信くんないくせに……昨日も学校でも会わなかったけど、何で? 何で竜とは会ってんの?」 「……知らないよ。たまたま帰りに会ったから」 「ふうん、そうなんだ……」 志音といい修斗さんといい ……何か変。

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