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同棲NG

雅さんも母さんも意気投合してさっきまでの涙もおさまり、また和気藹々と談笑している。 お茶のおかわりをいれたところで、周さんが「独り暮らしになったら竜太と一緒に生活する!」なんて言いだしたもんだから、母親二人に僕らはお説教をくらう羽目になった。 「全く、何を言うのかと思ったら! 竜ちゃんはあんたと違って今度は受験生なのよ! 子どものくせしていっちょ前に自立した気になってんじゃないわよ。謙ちゃんだって条件出したでしょ? あんた聞いてなかったの?」 「条件?」なんて首を傾げてる周さんにまた雅さんが怒りだす。 「ほんと、この子ったら何にも聞いてないんだから!」 周さんの独り暮らしを許可する条件…… 掃除、ゴミ捨て等疎かにしない。 友達を呼んでバカ騒ぎをしない。 彼女との同棲は認めない。 自分たち親の都合でもあるから、家賃と生活費は高校を業するまでは支払うが、卒業し落ち着いたら自分で稼いで家賃等払うこと。 ……同棲はダメ。 まぁ、そうだよね。 でも僕も周さんと二人で暮らすのを夢見ちゃったからちょっと残念。 「もう周ったら竜ちゃん大好きだからずっと一緒にいたいのはわかるけどね、あんたも竜ちゃんも成人するまでは親に責任があるんだから、そこんところちゃんと理解しなさいよね」 周さんは雅さんを睨んでるけど、何も言い返せないで黙ってる。 「あの……でも僕、周さんのためにご飯作ってあげたりしてもいいですか? たまに台所をお借りしてもいいでしょうか……」 また怒られちゃうかな? って怖かったけど、雅さんも母さんも笑ってくれた。 「咲月(さつき)さんがいいって仰ってくれるなら、もちろんよ。こちらこそお願いしたいくらいだわ。あ、でも毎日のようにはダメよ。たまにね、たまに」 「ほんとに可愛いくていい子!」と言って雅さんは嬉しそうに僕の頭を撫でながらそう言ってくれたので、母さんも笑いながら了承してくれた。 母さんの前で雅さんに頭を撫でられて、なんだか恥ずかしい。 でもよかった…… 周さんはまだちょっと不満そうだけどね。 しばらくお喋りを楽しんだ後、仕事があるからと言って雅さんはひとり帰って行った。 母さんが周さんに夕飯をうちで食べていくようにと言っていたけど、僕は周さんと二人きりになりたかったからそれを断り二人で出かけることにした。 「今日は悪かったな。ありがとな」 周さんと並んで歩きながら、僕らはどこで食事しようか店を考える。 「でもよ、せっかく竜太と同棲できると思ったのにな〜。別にいいじゃんな?」 まだ納得がいってないのか、不貞腐れたまんまの周さんが頬を膨らませて可愛くなってる。 「……? なんだよ、何笑ってんの?」 周さんに上から顔を覗き込まれて、慌てて僕は口を押さえた。 「だって周さん、雅さんに僕と一緒に住む! なんてはっきり言っちゃうんだもん。ふふ……二人して怒られちゃいましたね」 最初は大人しかった雅さんが最後には結構な剣幕で怒ってたし。 僕はまた思い出して、可笑しくなって笑ってしまった。 「週末とか、僕……ご飯作りに行きますからね。たまにくらいなら泊まったりも……いいですよね?」 周さんの顔を見上げると、真面目な顔してみるみるうちに赤くなった。 「竜太がエロいこと言ってる」 はぁ? 全然エッチなことなんて言ってないし! 「竜太のエッチ〜」 なんてふざけながら、周さんに手を引かれ近くのコンビニに入る。 あれ? 夕飯…… 「今日はもういい! 弁当買って俺んち行くぞ。早くイチャイチャしたいし!」 ……周さん、声が大きい!

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