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修学旅行 一日目

バスの中でも飛行機の中でも志音はやっぱり元気がなく、時折高坂先生はこちらを伺うように視線を寄越していた。 ……いたたまれない。 「志音?……元気ないけど体調悪い?」 沖縄に到着して、また僕らはバスに揺られて宿泊するホテル方面に向かっている。相変わらず窓の外に顔を向け、身を隠すように小さくなっている志音に聞いてみた。 「僕ね、志音はお仕事が忙しいから修学旅行は来ないと思ってたんだ。でも一緒に来られて凄く嬉しい。楽しい思い出作ろうね」 できるだけ明るくそう言うと、顔を上げて笑ってくれた。 「ありがと竜太君……真司君がうるさすぎて滅入ってた」 僕の横に座る真司君を指差して笑う志音に、また真司君が騒ぎ出す。 「そんなにうるさかねえだろよ!……何だよいっつもスカしやがって、覚えてろよ? 枕投げでぶっ潰してやる」 ……まったく。 「は? 今時枕投げなんかやらないでしょ。埃たつじゃんか。俺らは夜は静かに寝るんだよ……てか真司君、イビキとかうるさそう〜。うるさかったら廊下に出してやるから」 げらげら笑って志音が煽るもんだから、しまいにはうるさいって担任に怒られてしまった。 「僕、とばっちり……」 ……でもよかった。志音、少し元気になったよね? バスでの観光を終え、宿泊予定のホテルに到着する。 ロビーに全員集められ、先生が簡単に話をしながら今後の予定を確認した。 各担任と、保健医の高坂先生が前に並んで順に注意事項を述べる。 高坂先生はいつもと変わらず少し冗談も交えながら簡潔に話をしていた。先生と僕は何度か目が合ったけど、僕の隣に並ぶ志音は終始下を向いて前を見ようとはしなかった。 「………… 」 部屋に入ると夕飯の時間まで自由行動。真司君はごそごそとバッグからお菓子を取り出して、ベッドの上で広げている。 「ちょっと。そこ俺が寝るところなんだから散らかすなよ」 志音が不機嫌に真司君のお菓子を隣のベッドに放った。 「俺の菓子投げんなよ、もうっ! 志音にはあげないからな。竜太、ほらチョコやる」 ポンとチョコを投げられ、僕は慌ててそれを受け取る。 「あれ? 志音どうしたの?……寝るの?」 志音は真司君の散らかしたお菓子をどかしていたと思ったら、もぞもぞとそのままベッドに潜り込んでしまった。 「うん……なんか怠いから、ちょっと寝る」 元気がないのは先生とのことが原因かと思っていたけど、なんだか顔色も悪いし本当に具合が悪いのかもしれない。 「自由時間って言ったって、すぐにお風呂の順番も回ってくるし夕飯もあるからね。大丈夫? えっ……と、一応高坂先生に知らせとく?」 僕は良かれと思ってそう聞いたんだけど、布団の中から目だけ出していた志音に睨まれてしまった。 「わざわざ保健医に言うほど具合悪くないから! 余計なことしないでよ。風呂も行かない……寝る!」 それだけ言うと頭からすっぽりと布団をかぶる。 「………… 」 「あん? なんだよ志音。言い方感じ悪いな! 竜太は心配してんだろうよ!……っておい! シカトしてんじゃねーよ! おい…… 」 志音のベッドに飛びかかろうとしている真司君を慌てて止める。 「いいんだよ真司君、静かに……なんか本当に具合悪そうだから寝かせてあげて」 ばたばたしていたから、すぐに隣の部屋のグループから声がかかり、お風呂の時間になってしまった。 「じゃぁ志音、僕らお風呂に行ってくるね」 ベッドで静かにしている志音を置いて、僕と真司君は急いで支度をし大浴場に向かった。

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