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大浴場

「……竜太」 「ん? なに?」 大浴場の脱衣所。 各クラス三回に分かれて十五分足らずの入浴時間。 さっさとお風呂に向かおうと服を脱いでいたら、隣に立っていた真司君に声をかけられた。 「竜太……体、なんかエロいな……」 舐め回すように上から下、下から上へと視線を這わせる真司君に腹が立ち僕は睨んだ。 「ちょっと! 何? どういう意味だよ!」 僕は周さんや康介、修斗さんみたいに筋肉もないし、ヒョロッと情けない体なのを自覚している。ハッキリ言って筋肉もなく細くて白い子どもみたいなこの体はコンプレックスでしかない。高校に入って周さんの体を目の当たりにしてからは特にそう感じる。 康介はもともとスポーツをいっぱいやるから、カッコよく筋肉がついて日焼けした肌が逞しい。周さんは背が高くて細い。運動をしているわけじゃないのに、脱いだらお腹も筋肉でぽこぽこ割れてるし、凄く逞しくて大人の男の人って感じで、正直ビックリしたんだ。 それに比べてのっぺりと何も凹凸もないこの体…… だから真司君に揶揄われているのかと思い、僕は物凄く不愉快に感じた。 「ちげえよ、何怒ってんの? 体育祭の時も思ったんだけどさ、いい体だって褒めてんだよ?」 「………… 」 どう聞いても馬鹿にされてるとしか思えなくて、僕はなんとなく恥ずかしくなり下着一枚の姿でタオルで胸元も隠した。 「女かよっ!」 真司君は爆笑しながら僕のタオルを剥ぎ取り、おまけに腰辺りを両手で摩ってきた。 「ほらやっぱり! 肌すべすべだし、ふにふにしてて柔らけえ〜。気持ちいい」 調子に乗った真司君に、胸やらお腹やら撫で回されてくすぐったい。 やっぱりバカにしてるじゃん! 「やだ! やめてっ……真司君! くすぐったいってば! ちょっと…… 」 逃げれば逃げるほど追い詰められ、しまいには奥の小上がりになっている所に押し倒される始末。 「重い!」 「……あれ? なんかちょっとだけ……勃っちった」 お互い下着姿で、僕にのしかかっている真司君のものが紛れもなく僕の足に当たっている。 「はぁ? 何でだよ! ちょっとやだ! 離れて!」 真司君から離れようと体を起こしたら、おもむろに下半身を撫でられた。 「ちょっ……? 何?」 「竜太は勃って……ない」 「当たり前だろ! 本当どうかしてる! 離れてよ! 重たい! 顔近い! 嫌だ!」 僕は必死に目の前の真司君の頬を両手で叩いた。

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