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まだ好きだから……
修学旅行は行きたくなかった──
でも本当は楽しみにしてたんだよ……
初めてできた友達と一緒の修学旅行。そんなの楽しいに決まってる。
それなのに……
先生とこんな風になるなんて思ってなかったから。
もう顔も見るのが辛いなんて思ってもいなかったから……
先生の記憶がしっかり元に戻った。
記憶が戻り、二日後には学校にも復活していた。
記憶が戻ったと悠さんが教えてくれたけど、俺は先生には連絡をしなかったし、先生からのメール、電話の着信全て無視した。合鍵で家に来られないように、家の鍵もすぐに変えた。
そう。もうおしまい……
先生が悪いんじゃない。
俺の事を忘れて、悠さんを愛しそうに見つめる先生の姿に胸が苦しかった。それでもまだ俺は、先生の回復を信じて寄り添えていた。
けど……
記憶が戻ったと思って体を重ねたあの夜。記憶は戻ってなんかいなくて、先生は俺の事をセフレ扱いしたんだ。
記憶が戻っていない、俺と出会う前の先生の本当の姿……
俺と出会う前の先生と俺の知っている先生は違うんだって、頭ではわかっていたけど、やっぱりショックだった。
許せなかった。
許せない自分も許せなかった──
もうどうしたらいいのかわからない。
先生の事を傷つけたくない。
自分のせいで俺が辛い思いをしたなんて絶対思われたくない……
俺自身ももうこんな辛い思いをしたくない。
どうしたらいいのかわからなくて、俺は先生から遠ざかる事を選んだんだ。
俺が先生のことを好きじゃなくなれば……こんな辛い思いをしなくてすむ。
初めのうちはしつこいくらいに携帯が鳴ったけど、すぐにそれもなくなった。悠さんからも心配してるってメールを貰った。
勿論保健室だって行っていないから、先生がどんなふうに過ごしてるかなんて俺にはわからない。
顔を合わせにくいから、俺が学校を退学するか先生が学校を辞めるかすればいいって本気で思った。真雪さんにそれを言ったら、今までにないくらいの無言の睨みで返され、俺はこれ以上何も言えなくなってしまった。
修学旅行当日、よりにもよって俺のクラスのバスに先生が乗り込んできた。
先生の視線から逃れるように身を隠す。
心臓が喉から出そう。
気を抜くと勝手に涙が溢れそう。
……帰りたい。
竜太君が心配そうにこちらを見る。
でもどうか、俺の事は放っておいて……
俺はバス、飛行機の中、ずっと先生の視線から逃れるように身を丸めて隠れて過ごした。
ごめんなさい。
まだ先生の事が好きだから……
顔を見るのが辛いんだ。
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