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発熱
ずっと縮こまって先生の視線から逃げていたからか、体が怠くて何だか気分が悪い……
宿泊するホテルに着いて、部屋に入ってもフラフラする。
真司君が相変わらず騒がしくベッドにお菓子をぶち撒けてるけど、さっさと横になりたい俺はそんなの無視して自分のスペースを作りベッドに潜り込んだ。
「あれ? 志音どうしたの?……寝るの?」
ずっと俺の事を気にしていた竜太君が心配そうにこっちを見る。
「うん……なんか怠いから、ちょっと寝る」
俺がそう言うと、すかさず先生に伝えるか? なんて言ってくるもんだから堪らず声を荒らげてしまった。
竜太君は悪気があって言ってるんじゃない。
俺のことを心配してくれてるだけなのに……
それでも俺は止められなかった。
「わざわざ保健医に言うほど具合悪くないから! 余計なことしないでよ。風呂も行かない……寝る!」
「………… 」
なんだか俺、駄々をこねてる子どもみたいだ。
恥ずかしい。
何か言いたげな顔をしたけど、竜太君は真司君を連れて部屋から出て行ってくれた。
「……はぁ」
修学旅行、全然楽しめないや。
体も怠いし、なんだか頭も痛くなってきた。具合が悪いのは気分的な問題だと思っていたけど、なんだか違うかもしれない。
体を起こそうと首を上げたら目眩がした。俺は諦めて目を瞑り、本当に眠る事にした。
意識が朦朧とする。
息苦しい。
でも目を開けるのも億劫なくらい怠さが増してきてる。
苦しい……
眠い……
朦朧とする中、部屋のドアが静かに開いたのに気がついた。
竜太君たちがお風呂から戻ってきたのかな? ちょっと早い気もするけど……まぁいいか。
竜太君たちにしては何だか静かだな、なんて思いながら俺は目を閉じたまま眠りに落ちる。
どのくらい経ったのかわからない。
突然おでこにヒヤッとした感覚に驚き我に返った。
「……?!」
目を開けた先に見えたのは、俺のおでこに手を置く先生の顔。
「なん……で?」
突然の先生の顔に驚き慌てて起き上がろうと体を動かす。まだ、まだ俺は先生と会いたくないんだ。
「ゔっ……嫌だ。え? 気持ち……悪いっ 」
慌てて先生の手を払いのけ、逃げようと体を起こしたら一気に目が回って吐き気に襲われた。
「馬鹿っ! 熱あるんだぞ……ここで寝とけ」
……怖い声。
ばたばたと先生はどこかへ行き、すぐにバケツを持ってベッドの横に戻ってきた。
手には濡らしたおしぼり。
「志音、体調いつから悪かったんだ? 吐きそうならここに吐いていいから……何も考えないでとりあえず寝てろ」
ベッドの横にバケツを置き、俺のおでこに冷えたおしぼりを置く先生の顔をそっと伺い見る。
久しぶりに見る先生の顔……俺に向けられる先生の声。
急に涙がこみ上げてきて、慌てて俺はベッドに潜った。
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