231 / 377

発熱

ずっと縮こまって先生の視線から逃げていたからか、体が怠くて何だか気分が悪い…… 宿泊するホテルに着いて、部屋に入ってもフラフラする。 真司君が相変わらず騒がしくベッドにお菓子をぶち撒けてるけど、さっさと横になりたい俺はそんなの無視して自分のスペースを作りベッドに潜り込んだ。 「あれ? 志音どうしたの?……寝るの?」 ずっと俺の事を気にしていた竜太君が心配そうにこっちを見る。 「うん……なんか怠いから、ちょっと寝る」 俺がそう言うと、すかさず先生に伝えるか? なんて言ってくるもんだから堪らず声を荒らげてしまった。 竜太君は悪気があって言ってるんじゃない。 俺のことを心配してくれてるだけなのに…… それでも俺は止められなかった。 「わざわざ保健医に言うほど具合悪くないから! 余計なことしないでよ。風呂も行かない……寝る!」 「………… 」 なんだか俺、駄々をこねてる子どもみたいだ。 恥ずかしい。 何か言いたげな顔をしたけど、竜太君は真司君を連れて部屋から出て行ってくれた。 「……はぁ」 修学旅行、全然楽しめないや。 体も怠いし、なんだか頭も痛くなってきた。具合が悪いのは気分的な問題だと思っていたけど、なんだか違うかもしれない。 体を起こそうと首を上げたら目眩がした。俺は諦めて目を瞑り、本当に眠る事にした。 意識が朦朧とする。 息苦しい。 でも目を開けるのも億劫なくらい怠さが増してきてる。 苦しい…… 眠い…… 朦朧とする中、部屋のドアが静かに開いたのに気がついた。 竜太君たちがお風呂から戻ってきたのかな? ちょっと早い気もするけど……まぁいいか。 竜太君たちにしては何だか静かだな、なんて思いながら俺は目を閉じたまま眠りに落ちる。 どのくらい経ったのかわからない。 突然おでこにヒヤッとした感覚に驚き我に返った。 「……?!」 目を開けた先に見えたのは、俺のおでこに手を置く先生の顔。 「なん……で?」 突然の先生の顔に驚き慌てて起き上がろうと体を動かす。まだ、まだ俺は先生と会いたくないんだ。 「ゔっ……嫌だ。え? 気持ち……悪いっ 」 慌てて先生の手を払いのけ、逃げようと体を起こしたら一気に目が回って吐き気に襲われた。 「馬鹿っ! 熱あるんだぞ……ここで寝とけ」 ……怖い声。 ばたばたと先生はどこかへ行き、すぐにバケツを持ってベッドの横に戻ってきた。 手には濡らしたおしぼり。 「志音、体調いつから悪かったんだ? 吐きそうならここに吐いていいから……何も考えないでとりあえず寝てろ」 ベッドの横にバケツを置き、俺のおでこに冷えたおしぼりを置く先生の顔をそっと伺い見る。 久しぶりに見る先生の顔……俺に向けられる先生の声。 急に涙がこみ上げてきて、慌てて俺はベッドに潜った。

ともだちにシェアしよう!