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大丈夫
お風呂を終えて僕は真司君と一緒に部屋へ戻る。
この後はすぐに夕飯の時間だから、早めに支度をしないといけない。真司君はろくに髪の毛も乾かさないでタオルを頭に乗っけたまんま、だらしなくペタペタと廊下を歩いていた。
部屋に入ると寝ていたはずの志音の姿がない。
「あれ? 志音一人で風呂行ったんかな?」
頭のタオルを肩にかけなおしながら真司君が呟く。
「………… 」
志音が具合悪いと伝えたら、高坂先生は結構な剣幕で出て行った。だから志音はきっと先生の部屋だろうと思い「そうかもね」と適当に返事をして夕飯に出る支度をした。
「ところで、ねぇ……いつまでそんな格好でいるつもり? 髪から垂れてるよ」
頭がビショビショのまんまボサっとしているもんだから、真司君の足下の床をポタポタと濡らしていた。
「ん、竜太ドライヤーやってよ」
「え? なんで僕が? ……自分でやんなよ」
思わず普通に即答しちゃったけど、いつも周さんの髪の毛乾かしてあげたりしてるんだから同じようにやってあげてもよかったのかな?
いや、やってあげる義理はないよね。
「んぁー、もう! 竜太冷たいし!」
ぶつぶつ言いながらも真司君は髪を乾かし始めたので、僕は構わず自分の支度を進めた。
集合時間が来たので、僕も真司君も部屋から出て食堂へ向かう。
少し歩いたらいつのまにか近くまで来ていた高坂先生に呼び止められた。
「竜太くん……ちょっと」
真司君には先に行ってもらい、先生の方へ歩く。疲れたような微妙な表情の先生は少し目元も赤くなっているようだった。
「あの……大丈夫ですか?」
心配で思わず先生にそう聞いてしまいちょっと焦る。こんなの余計なお世話この上ない。
「あ……いえ、何でもないです。あの、志音大丈夫ですか? 具合悪そうだったから……」
「そう、ちょっと熱があるから俺の部屋で休ませてる。他の先生にも伝えてあるから……志音の事は気にせずグループ活動してね。でも熱下がって大丈夫そうなら明日からちゃんと参加させるから」
志音は大丈夫なんだろうか。
余計なお世話……そんな言葉が何度も頭を過った。
「あの先生……志音、ここのところずっと元気がなくて。えっと……僕心配だったから…… 」
僕が言い終わらないうちに先生に肩をとんと叩かれた。
「大丈夫だよ。僕も……大丈夫。竜太くんにも心配かけちゃったみたいだね。うん……もう大丈夫だから。ありがとう」
「………… 」
少しだけ目を赤くした先生にそう言われ、これ以上聞くのは野暮だと思い僕は安心して食堂へ向かった。
……よかった。
もうちゃんと仲直り出来たんだよね?
先生ももう大丈夫なんだよね?
志音、本当によかったね。
なんだか自分のことのように嬉しくなって、僕は目頭が熱くなってしまった。
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