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消灯前

就寝までの自由時間。 志音がいなくなっちゃったからこの部屋には真司君と二人だ。 「………… 」 真司君はさっきから一人で楽しそうにベッドの上で鞄を開けて、ジュースやらお菓子を取り出している。 「さっきもお菓子食べてなかった?」 ちょっと呆れて僕は真司君に声をかけた。 「なんかいっぱい持ってきちまったから減らさないと……竜太もあげるよ」 夕飯食べたばっかでそんなのお腹に入らないし。 志音いなくて寂しいな。 「そういえばさっき飯の時どうした? 竜太泣きそうな顔してたじゃん……なんかあった? また誰かに何か言われたのか?」 急に真司君が真横に来ていて、僕の肩を抱くようにして顔を覗き込んできた。 「……? へっ? どうもしないよ!」 いきなりの至近距離に驚いて、僕は真司君と距離をとる。 「本当か?……ほら、ここはさ……橘先輩もいないし、何かあったら俺に言えよ?」 僕の事を心配して言ってくれてるのはわかるんだけど…… どうもこの距離感が苦手なんだよな。 「………… 」 ほら…… 今もまた僕のすぐ横に座り直して、太腿の上に手を置かれてる。 「ありがとう。今のところ何もないから。それに最近は嫌がらせみたいなのもないから心配ないよ……はいっ! この手、いやらしい」 真司君の手をピシャッと叩いて軽く払いのけた。 「ふふっ…… 」 急にドアの方から笑い声が聞こえ、びっくりして見てみると笑いを堪えている康介が立っていた。 「あっ、康介! どうしたの? 入んなよ」 志音がいなくて寂しく思ったいたところに康介が来てくれたので嬉しくなって俄然テンションが上がる。 「なんかよ、クラスの奴らが風呂場で竜が襲われてたって騒いでたから心配して見に来たんだけど……まぁ心配なさそうだな? どうせお前だろ? 真司君よぉ」 康介が笑いながら真司君の胸ぐらを掴み軽く揺さぶる。 「周さんがいないからって調子乗んなよ? 仮にも竜に手ぇ出すようなことがあったら、俺がぶっ飛ばすかんな」 そんな「手を出す」なんて変なこと言わないでよ。 ほら見ろ……なんか真司君、変に意識しちゃったような顔してる。 「いや、そんな事しねえって……康介離せって」 赤い顔をしてしどろもどろな真司君を今度は本気で康介が睨んだ。 真司君は元々馴れ馴れしいんだよ。 変な意味はなくて「無意識」でくっついてくる事が殆どなんだ。 康介の余計なひと言で、真司君が変に意識しちゃったじゃん。 康介のバカ…… 「てかさ、志音どうした? いないじゃん」 「うん、具合悪くてね……高坂先生のところで休んでる」 僕がそう説明すると、分かり易すぎるくらい顔を赤くして慌てる康介。何か喋りかねないから慌てて僕は話題を変えた。 その後は康介も一緒にお菓子をもりもり食べ、他愛ない話で盛り上がった。 やっぱり康介も同じクラスで一緒にいたかったな…… 「真司! 竜と二人きりだからって手ぇ出すなよ!」 就寝時間前に康介のクラスの人が迎えに来て、また余計なひと言を残して康介は自分の部屋へと帰って行った。 ……せっかく話題が逸れて忘れてたのに。 残された僕たち二人。 真司君の方を見ると赤い顔をして「大丈夫……心配すんな」そう僕に向かって呟いた。 いや、意識しないでくれる? あんまり大丈夫そうに見えないんだけど…… ちょっと不安を覚えつつ、僕らは点呼に来る先生を待った。

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