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就寝時間
点呼の後は消灯就寝──
明日の支度をして僕はベッドに入る。
結局志音は戻ってこなかった。
そうだよね……
先生は、志音の体調が良くなれば明日から参加するからって言っていた。
だから今夜は戻ってくることはないよね。
僕らの部屋は三人部屋。
ベッドが二つに簡易ベッドが一つ。
志音が使っていたベッドを避け、真司君が簡易ベッドに横になった。
「おやすみ」
「うん……おやすみ」
僕は真司君に背中を向けて目を瞑る。
このまま静かに眠れるかな……?
「ねぇ、竜太。せっかくだからさ、ちょっと話さねえ? 志音もいないし枕投げも出来ないからさ、このまま寝ちゃうのなんかつまんねえ……」
「いや、枕投げ本気でするつもりだったの? 志音がいたって僕は嫌だよ、やらないよ」
二人でクスクス笑った。
お互いベッドで寝そべったまま、顔だけ向けてお喋りをする。
「……ずっと不思議だったんだけどさ……聞いてもいいか?」
「ん?」
何となく何を聞かれるのかわかってしまった。
「なんで橘先輩なの?」
いつものふざけた顔じゃなくて、真剣な顔をして真司君が僕を見つめる。
「やっぱりおかしいと思う? 僕と周さん……全然釣り合わないもんね。何で僕なんかが……そう思うんでしょ?」
周さんはカッコいいし強いし。おかしいって思われてもしょうがない。でも面と向かって言われるのは、何度言われてもやっぱり慣れないし正直悲しかった。
「はぁ? そうじゃねえよ。竜太カッコいいしモテそうなのに、何で橘先輩なんだ? って事。そもそも男じゃん……」
そういう事か。
「僕カッコよくないし……いつも真司君は僕の事カッコいいって言ってくれるよね? ありがとう。そんな風に言ってくれるの真司君くらいだよ」
僕の事カッコいいって言ったり、好きだと言ったり……
「そんな謙遜するなよ。勢いでキスできちゃうくらい竜太はいい男だと思うよ?」
ジッと僕を見つめる真司君の視線が少し怖い。
「あ……ありがと」
「それに、なんかエロいし……」
……?
「な……なに?」
おもむろに起き上がり、僕の方へ寄ってくる真司君。
思わず緊張で体が強張る。
「竜太はどういう顔をしてキスしたり……エッチな事するのかな? って思って……」
僕の寝ているベッドに真司君の体重がかかり、慌てて体を起こした。
「ちょっと!……何? ……待って 」
息を荒くした真司君に肩をグッと掴まれ、簡単に僕は押し倒されてしまった。
「竜太……ちょっとだけ」
何がちょっとだけだよ!
重くのしかかってくる真司君から逃れようと僕は必死に腕を突っぱねた。
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