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攻防
「冗談だよね……? やめてくれる?」
極力冷静を装って、真司君に訴える。
力じゃ全然真司君には敵わない。さっきから腕を突っぱねてみるものの全然真司君から逃れる事ができないでいた。
真司君は友達思いだし、酷い事をするような人じゃないって事はわかってる。なんだかお風呂の時から変なスイッチ入っちゃって暴走してるだけなんだよね?
「冗談じゃないよ? さっき風呂場で俺、変な気持ちになった……竜太の事、抱いたらどうなんだろうって思っちゃった」
は?
冗談じゃない!
「どうなんだろうって、どうもしないよ! 僕はそんな気ないから! 真司君、女の子が好きなんでしょ? やめてよ……ほんと嫌だ」
迫ってくる真司君から顔を背けると、顎を掴まれ真司君の方へ向かされる。その手は優しくて、決して乱暴ではないけれど、それでも僕は少し怖くなって体が震えてしまった。
友達に対してこんな気持ちになりたくないのに……
「俺を見ろよ……」
「……嫌だ」
真司君の片手が僕の脇腹を撫でる。
周さんがいつもそうしてくれるように、優しくて僕の体を確かめるようなその動きも、相手が周さんじゃないだけでこんなにも違う。
「竜太の肌、すべすべして気持ちいい……どう? 気持ちよくなってきた?感じる?」
真司君の手が、脇腹から胸元へ上がってくる。
弄るようにして服の中へと忍び込んでくるその手はやっぱり優しい。
でも僕はその手に何も感じなかった。
「気持ちよく……なってよ」
懇願するような表情で、唇と唇が触れ合いそうな距離で真司君が僕に囁く。
「なれないよ……もうやめて」
「じゃあ、ここは……?」
スルリと無遠慮に真司君の手が僕のズボンの中へ滑り込んできた。
「あっ!……だめ!」
真司君の手を上から掴みそこから退かそうと試みるも、どうにも力強くてビクともしない。
「お願い!もうこんな事やめてよ」
僕が体を捩ってみても状況はなにも変わらない。同じ男なのに、こんなにも力の差があることにショックを受けた。
「や……だ! ねぇ、触らないで! 真司君ってば!」
「……竜太、声大きい」
ふと顔を近づけてくる真司君が、僕にキスをしようとしてるのに気がつき咄嗟に顔を背けて回避した。唇に触れるかわりに、真司君は僕の首筋に顔を埋める。鼻をすり寄せ首筋をペロリと舐めた。
「やだ……やだよ。もうやめてよ……」
「やっぱり竜太、肌綺麗だな。女と何も変わんねえ……」
「………… 」
僕の首筋に舌を這わし、耳朶を食む真司君に僕は溜息を吐く。真司君の言葉にすっと冷静になれた気がした。
「ねえ、真司君。ちょっと僕の話聞いてくれる?」
体を弄り首筋を舐り、僕にのしかかって貪りつく興奮気味な真司君の肩にポンと手を置き、僕はそのまま軽く抱きしめた。
僕が急に抱きついたもんだから、真司君は驚いて動きを止める。
「え? 竜太……?」
「ねぇ? 真司君は僕のことが好きなの?」
真司君を見つめ、僕は自分でもびっくりするくらい冷静にそう聞いた。
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