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僕だって……

「え? す、好きだけど……」 僕の問いにちょっと目を泳がせながら真司君が答える。 「僕も好きだよ。でもそれは友達として……大事な友達として僕は真司君が好き」 僕から顔を逸らした真司君の頬に手を添え、自分の方へ向かせた。 みるみる真司君の顔が赤くなるのがわかる。 「僕は女の子?」 そう聞くと真司君はキョトンとして小さく首を振った。 「真司君はさ、気になる子がいたらすぐにこうやって体を触ったりして確かめるの?……自分が興味を持ったらすぐにその子を抱こうとするの?」 「は? そんなわけねえだろ? 相手の気持ちだってあるわけだし……」 「じゃあ、なんで僕ならいいと思った? 気になるから抱いてみたいって思ったの?」 「………… 」 真司君は何も答えず黙り込む。 大丈夫、真司君ならちゃんとわかってくれるはず…… 「それは僕が同性だから。同じ男だから軽く見てるんだよ。同じ男なんだから少しくらい触ってもいいだろう?……って。好きな女の子には大切にしようって思うくせに、僕は同じ男だからって軽んじて見てるんだよ」 黙ったまま真司君が僕を見つめる。 「でもね、僕だってちゃんと恋愛してるんだ。真司君が女の子を好きになって大切にしたいって思うのと同じように、周さんを大事に思って……男同士でも真剣に僕らは恋愛してるんだよ。だから真司君にはこんな事してほしくない。周さんが傷付くし、僕だって周さん以外の人とキスをしたり触れ合いたいって思わない。僕にとって真司君は大切な友達に変わりないから……それにこんな事をされても真司君に恋愛感情はわかないよ」 黙って聞いていた真司君が、やっと僕の上から離れてくれた。 「……ごめん。俺……ちょっとトイレ」 「………… 」 ボソリと呟いた真司君はトイレにこもり、僕はまた布団に潜った。 よかった── 僕は悔しい気持ちを胸の奥へ押し込み、今頃になってドキドキして震える体を抱きしめた。 真司君がトイレに入ってから少しするとドアがコンコンとノックされる。静かにドアが開いてそこを見ると、見回りに来た高坂先生が立っていた。 「なんだ? まだ起きてたのか? 明日も早いんだからちゃんと寝ろよ……ん? もう一人はどうした?」 「あ、トイレです」 トイレの方にちらっと視線を向けるがそれ以上は特に何も言わず、僕の方を見る。 「問題はない?」 心配そうな先生の顔。 でももう大丈夫。 「はい。あ、志音はどうしてますか?」 熱を出した志音だけど、今はもう熱も下がってゆっくり寝ているから心配ないと教えてくれた。 「朝食の時間には合流させるから。竜太くん達も早く寝なね。おやすみ」 先生は他の部屋も見回りしなきゃならないからと言って、すぐに行ってしまった。 しばらくしてトイレから出てきた真司君は黙って自分のベッドへ戻る。 「竜太……ごめんな。でも、でも……橘先輩にやきもち妬けるくらいはお前の事気になるし、好きだから」 そう言いながら、少しだけ不満そうな顔をして布団に潜る。好意を持ってもらえるのは嬉しいことだけど、真司君のそれはきっと一時の気の迷いみたいなものだと思う。 でもわかってもらえてよかった。 「竜太の事、軽んじてたわけじゃ……ないから。止めらんなくて本当ごめん」 「うん……いいよ。おやすみ」 多少は気まずいかもしれないけど、それでも僕は真司君とはこれからも友達として仲良くしていきたい。 反省してくれてるし、僕も気持ちをしっかりしていれば大丈夫。 そう思って僕は目を瞑り、眠りについた。

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