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昨晩の二人/底知れない不安

言われる通りに熱を計るも、ちょっと微熱があるだけで何ともない。 「はい……熱ないよ。全然大丈夫。お粥、陸也さん食べさせて」 「………… 」 困った顔のままの先生は、俺の肩をポンと叩く。 「食べさせてやってもいいけど、こんなにくっつかれてたらできないよ? ちょっとだけ、離れような」 そう言って俺から少し離れてベッドに座り直す先生の横へ、俺もすかさず身を寄せる。 「………… 」 「だから…… 志音? ちょっとでいいから俺から離れろ。どこも行かないから。お粥、食うんだろう?」 「うん……」 ちょっと怖い顔に見えた先生に、気分が落ち込む。 ……どうしちゃったんだろう。ちょっとした事で凄い不安になる。 お粥なんかいらない。 「ん? 志音? ほらお粥……」 匙で掬われた一口分のお粥を、先生からパクッと食べる。 味なんかしない、口に入れられたお粥を喉奥へと押し込み、俺は無理やり飲み込んだ。 半分ほど食べ終えると、先生は首を傾げて俺に聞いた。 「もうやめとくか? ご馳走様?」 顎を動かすことすら億劫になっていた俺は、だいぶ前に食べさせられた一口が飲み込めずにぼんやりとしていた。 「うん。もう……いらない。ありがとう」 気分が落ち込む。 俺は先生を困らせてばかりだ。 食器を片付けるために立ち上がった先生の腰に思わずしがみつく。急にそんな事をしたものだから、驚いて器を落としそうになった先生が振り返り「おいっ!」と声を上げた。 別に何でもないそんなひと言でも、ちょっと大きな声だってだけで俺はびくっと体が震える。 「あ……ごめん陸也さん」 「行かないで」と言う言葉を慌てて飲み込み、泣きそうな顔を見られないように俯いた。 なんでこんなに不安になってしまうんだろう。なんでこんなにすぐに泣きたくなってしまうんだろう。 食器を片付け終えた先生はまた俺の横に座った。 「俺はここにいるから。心配するな。あんな事、もう二度とあってたまるかよ……不安なんだろ? 遠慮しなくていいから……思ってる事、我慢しなくていいから全部俺にぶつけろ。な? 泣いたっていいからさ」 そう言って先生は俺の事を抱きしめてくれた。 「俺、ほっとしたら……今度はすごく不安になった。やだ……離れたくない。怖いよ……俺の事ちゃんと好き? もう忘れない?」 泣いたっていいと言われすっかり気が緩んだ俺は、隠すことなく先生の胸で涙を流す。 泣けば泣くほどどんどん悲しくて、でもまた先生といられる嬉しさとで頭の中がぐちゃぐちゃになりバカみたいに声をあげて泣きじゃくってしまった。

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