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館内にて
のんびりとお喋りしながら館内の順路に従い通路を進む。
ふと気がつくと、前方を歩いていた志音と真司君の姿が見えなくなっていた。
「あれ? 志音たちは?」
康介に言うと、きょろきょろとしてすぐに二人を見つけてくれた。
「なんだよあれ……ちょっとした騒ぎじゃね?」
少し先にちょとした人集り。女の子数人に囲まれた二人の頭が辛うじて確認できた。
「志音……だな」
「だね……」
遠巻きに見ていると、やっぱり取り囲んでるのは志音のファンだという女の子達だった。楽しそうな女の子達とは対照的に、志音はムスッとした顔で不機嫌そう。
もう少し愛想良くすればいいのに……
暫く様子を見ていたけど、不機嫌そうな志音は別として隣で女の子達にやんや言われてる真司君が可哀相になってきた。
「ちょっと僕、行ってくる」
僕は見かねて女の子達の輪に入ろうと足を進めると、横から高坂先生が割って入った。
「はいはい! ごめんね。もうおしまい! 修学旅行で来てるから、他のお客さんの迷惑になるからここに集まらないでね」
和かにそう言って、先生は颯爽と志音だけ連れて行ってしまった。
「………… 」
ポツンと残された真司君は、同じく残された女の子達に今度は文句を言われてる。
「真司、ウケる……女子達に志音連れて来いって言われて困ってるよ」
「康介、笑ってないで真司君助けに行こ」
僕は急いで真司君のもとへ向かった。
「びびった……女怖え。志音がいなくなった途端なんで俺が悪者なんだよ、あんまりじゃね? わけわかんね……」
真司君を女の子の輪の中から助け出し、康介と三人で水族館をまわる。
「くそっ、志音がいなきゃ俺だって……」
「真司君、女の子とお喋りするの慣れてるんじゃないの?」
ちょっと揶揄ってそう言うと「あんなに大人数で取り囲まれたことなんてないから」と言って笑った。
ひと通りまわったのでお土産のコーナーへ立ち寄って、色々と眺める。周さんのお土産はここで何か買っていこうかな。
「ねえ見てこれ! 可愛い! ……こういうの周さん嫌かな? どう思う?」
半透明の手の平サイズのキーホルダー。
パッと目にとまり、可愛くて思わず康介に聞いてみた。
「……それが可愛いかどうかは疑問だけど、何でクラゲ? どちらかっていうと横にあるイルカとかの方が可愛いんじゃね?」
「………… 」
棚に並んでるクラゲのキーホルダーを見た時に、周さんとクラゲの水槽の前でこっそりキスをしたのを思い出したんだ……
「クラゲのがいいの! 僕これにする」
「なら最初から俺に聞くなよ。クラゲ変だし……竜、趣味悪いし」
康介に文句言われながら、僕は周さんとお揃いでクラゲのキーホルダーを買った。
周さん、喜んでくれるといいな。
買い物を済ませ、康介と真司君に待っててもらい僕はトイレに立ち寄った。
「……?!」
通路の奥にあるトイレの入り口を開けると、目の前でキスをしている志音と高坂先生の姿が目に飛び込んできて、僕は驚きのあまり声を失った。
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