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周が感じた違和感

竜太は修学旅行中── せっかくお袋が謙誠の所に引っ越して念願のひとり暮しになったっていうのに、竜太がいないんじゃめっちゃ寂しい。 とりあえず一日目の今日は夜までバイトが入ってるし、気を紛らわすことができた。 スタジオ練習もないし、バイト終わりにコンビニで何か飯でも買って帰ろうかと思っていたら、修斗からメッセージが入ってるのに気がついた。 そっか…… こいつも康介いないから暇してんのかな? 単純にそう思って、バイトが終わってから俺は修斗に連絡を入れた。 かけてすぐ、ワンコールでご機嫌な声が飛び込んできてちょっと驚く。酒でも飲んでるのかな? 『周かぁ? ねぇねえ、お腹すいた! ご飯食べ行こうぜ!』 いつも以上のテンションが気になりつつ、俺は待ち合わせ場所に向かった。 「よっ……なんか悪いな、急に呼び出して」 待ち合わせた場所に既に到着していた修斗が俺の顔を見るなり謝ってきた。先程の電話口での陽気な様子はすっかりなくなりいつもの修斗だ。寧ろ少し元気がないようにも見える。修斗らしくない申し訳なさそうな様子が気持ち悪かった。 「いや、別にいいよ。俺も竜太いねえし飯一人で食おうと思ってたから……」 「そか、よかった……」 俺達はいつも練習の後によく行くファミレスに入った。 メニューをぱらぱらしながら修斗の顔を伺う。 ……やっぱなんか変なんだよな。 気のせいかもしれないけど、いつもの修斗とは違う香水の匂いがした。 今日は学校にも来てなかったし……何かあったのかな? 修斗は俺が見てるのも気付かずにメニューに目を落としてる。ひと通りメニューを眺めた後、パタンと閉じながら「腹減ってるの引っ込んだ」と呟いた。 「俺、サラダだけでいいや」 「………… 」 やっぱり変だ。 「なぁ、どうした?……お前今日学校休んだろ? 飯だってちゃんと食えよ」 「は? 別にどうもしねえよ?」 修斗が少しだけ頬を膨らませて俺の事を睨んでる。 こいつがこういう顔をする時は絶対何かある。 「まったく。何年お前と付き合ってると思ってんだよ……言いたい事あるなら言えよ!」 俺も唐揚げとカツ丼を頼み、修斗を睨んだ。 「……やだっ」 「やだってお前、俺に何か話したくて呼んだんじゃねぇの?……それに女臭えんだよ。なに匂い付けられてんの?」 別に香水臭かったわけでもない。 何となくいつもと違う匂いがしたってだけだ。 俺は修斗の態度に少しイラついてキツく言ってしまった。 でもそんなのいつもの事だし、このくらいでどうにかなるような奴じゃない。 それなのに…… 俺のそんなひと言で修斗は益々頬を膨らませて黙り込んでしまった。 なんなんだよ──

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