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旅の終わり

修学旅行最終日── 僕らは土産屋で物色中だ。 「竜はまた周さんに買うの? 昨日キーホルダー買ってたじゃん」 康介が両手にお菓子の袋を掴みながら僕に聞いてくる。 「うん。あれだけじゃないもん。一緒に食べるお菓子も買うの。去年周さんが買ってきてくれたやつが美味しかったから……一緒に探してよ。見つからなくってさ」 僕は去年周さんがくれたお土産のお菓子と同じものを買って帰ろうとさっきから探しているんだけどなかなか見つからなくて困っていた。名前も忘れてしまったから、康介の腕を引き一緒に探してもらった。 「あ、康介は? 修斗さんって確かちんすこう気に入っていっぱい買ってたよね? 買っていってあげたら喜ぶんじゃないの?」 去年康介に次から次へと色んな種類のちんすこうを差し出してた修斗さんを思い出して笑ってしまった。 「……喜ばないよ、きっと。受け取ってもらえないような気がする」 「え? 何で?」 両手に持ったお菓子の袋を棚に戻しながら康介はしょんぼりと話し始めた。 「もうだいぶ修斗さんと連絡取れてないんだ。学校でも会えてなかったし。気のせいかと思ってたけどやっぱり俺、避けられてるみたい……昨日も一昨日も電話したんだけど出てもらえなかった」 苦笑いしながら康介は溜め息を吐く。僕は康介の話を聞きながら、信じられない気持ちでいっぱいだった。 「きっと修斗さん忙しかったんだよ。僕だって一日目は周さんと連絡とってないよ? 康介、ね? そんなこと言わないでさ、帰ったら一緒にお土産渡そうよ」 僕はなんて言っていいのかわからなかった。 気休めの言葉しかかけられない自分に嫌気がさす……康介が落ち込んでいるのは一目瞭然なのに。 「いいよ……竜、ありがと。周さんだって言ってただろ? 何か俺、修斗さんの気に触ることしちゃったんだと思う。不安がらせるようなこと……したかもしれない。わかんねえけど」 今にも泣き出しそうな顔で唇を結ぶ康介に、僕はうまく言葉が見つからない。慰めるように康介の背中を軽く叩き、僕らはお土産屋を後にした。 その後はクラス毎に観光をし、また宿泊していたホテルに戻り帰り支度をする。 康介とは学校に着くまでそれっきり。 明日も学校だから、去年みたいに周さんと修斗さんと昼休みにでも会えれば康介だってお土産ちゃんと渡せるよね。 周さんの家に帰ったら、学校で修斗さんに会えるよう伝えてもらおう。 二泊三日の修学旅行。 色々あったけど、いい思い出になった。 帰りの飛行機の中で志音と写真を撮る。 クラスの仲間とも一緒に写真を撮る。 この旅行で仲良くなれたクラスメイトと連絡先の交換もした。気兼ねなくお喋りができる友達が増えて、また少し世界が広がったような気がする。 修学旅行、来てよかった。 地元に帰ったら周さんと会える。 僕のために夕ご飯を作ってくれてるって…… 怪我してないだろうか。 心配やら嬉しいやら。 学校に着いて解散をし、帰りの電車の中で僕の隣に座りうつらうつらしている康介に肩を貸してあげながら、僕も少しだけ眠った。

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