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お揃いの物は……
昼休み、いつものメンバーで屋上で過ごす。
修斗さんを除いて……
竜がしきりに俺を気にしてくれてるのがわかって胸が痛んだ。
昨晩俺が送ったメッセージには既読のマークが付いている。返信は無いけど、見てくれてる筈……それなのに修斗さんは来てくれなかった。
竜は周さんに嬉しそうに修学旅行の話をしはじめた。
真司に揶揄われたなんて言ってるけど、竜の事だからまた迫られたんじゃねえのかな? 風呂場で襲われたなんて噂が立ってるわけだし。周さんが複雑な顔をして竜の話を聞いてやってる様子を見て、やっぱり羨ましく思ってしまった。
今の俺たちにはああいう信頼関係が無い……
そもそも俺は修斗さんと付き合うようになったって、恋人だと言われたって、自信がなくて不安だったんだ。
仲睦まじい竜達の姿を見て、いたたまれなくなってくる。
こっそりと二人に気づかれないように、いつも修斗さんと過ごす壁の裏の秘密の場所へと身を隠した。
昼休みも終わり、竜も周さんも屋上から出て行く。
俺は授業に出る気も起きず、このままここでぼんやりと過ごした。
壁に寄りかかり膝を抱えて丸くなっていると、誰かの気配が近づいてくるのがわかった。
まさか、修斗さん?
心臓がバクバクする。
足音がすぐそこまで近づく。そこのベンチに腰掛けないで更に近づいてくるのはきっと修斗さんしかいない。
どうしよう……
俺は緊張から逃れるように、自分の膝に顔を伏せた。
「あ…… 」
頭上からぽつりと聞こえた声はやっぱり修斗さんだった。
声を聞くのも何日ぶりだろう。
俺はどういう顔をしたらいいのかわからなくて、顔を上げずに寝たふりをした。そんな俺に話しかけることもなく、修斗さんは黙って俺の隣に腰を下ろす。
よかった……
俺の姿を見て、黙ってここから出て行ってしまったら俺はきっと泣いてしまうと思う。それでも俺は修斗さんに話しかけることができずに寝たふりを続けた。
「康介……」
少しの沈黙の後、小さな声で修斗さんは俺の名を囁きそのまま寄りかかってきた。
「起きてるんだろ?……お帰り、康介」
恐る恐る横を向くと、にっこりと笑った修斗さんの顔が見えた。
「……ただいま。会いたかったです」
声が掠れる。泣きたくなる。
俺はちゃんと笑えてるだろうか。
いつもと変わらず何とも無い風を装って、俺は目の前の修斗さんの頬にキスをした。
「よかった会えて……はい、これお土産です」
ポケットの中に忍ばせていた小さな包みを手渡し反応を見る。修斗さんはキョトンとした顔でそれを受け取り、中を覗くとパアッと笑顔が広がった。
「可愛いなおい! 女子かよっ。ありがとうな康介」
指先に引っ掛けてくるくると回す。
水族館で買ったイルカのキーホルダー。修斗さんの大好きなちんすこうも買おうと思ったけど、食べて無くなってしまうものじゃなくて形に残るものがいいと思いキーホルダーだけにした。
「それだけだけど……喜んでもらえてよかったです」
「うん。去年のシーサー君と一緒に付けとくね」
去年はお揃いって言って中途半端にデカいシーサーのキーホルダーを修斗さんからもらった。
今でも俺の鞄にぶら下がってる。
「あれ? イルカ君は康介とおそろじゃないの?」
修斗さんにそう聞かれ、俺は頷く。
本当はお揃いで買ったけど、俺のは部屋の引き出しにしまい込んでる。きっともうそこから出すことはないと思う。だってよく考えたらさ、おそろいの物って別れた時辛いだろ? このシーサー君だって、フラれる前に外したいんだ。
でもまだしがみついていたいから……
「……そっか」
少し寂しそうな修斗さんの声が聞こえた。
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