272 / 377

元カノとの再会

少しずつ康介と距離を置く。 このまま卒業して、康介と会わなくなっても大丈夫なように…… 康介が男と付き合ってるのがおかしいって気づいても大丈夫なように…… 放課後康介と過ごさなくなったから、前によく遊んでた奴らと連絡を取るようになった。 何度か遊んでるうちに、昔みたいに色んな奴から誘われるようになり忙しくなった。 だいぶ気が紛れたから俺にとってはちょうどよかった。 康介の事も忘れて遊びまわる。 そのうち俺も気の合う奴が見つかるかもしれない。 今はまだ康介の事が好きだから辛いけど、きっと今だけ…… 時間が経てば辛くなくなる。そう思いながら俺は康介のいない日々を過ごしていた。 そしてそんな時に碧ちゃんと再会したんだ。 たまたま立ち寄った本屋で声をかけられた。そこの本屋はカフェを併設していて、これからお茶をして帰ると言う碧ちゃんに誘われ俺は懐かしさから二つ返事で一緒にお茶をする事にした。 「ほんと! 久しぶりだね。なんだか凄く大人っぽくなっちゃってびっくりしちゃった……カッコいいのは昔のままだね」 くすくすと口元に手をやり笑顔を振りまく。 碧ちゃんは付き合ってた時から全然変わらなかった。とっても気さくで話しやすい愛嬌のある笑顔。 ちゃんと自分の可愛いところがわかってる人…… 可愛い自分の魅せ方をわかってるこの人は今でもきっとモテるんだろうな。 「碧ちゃんは変わらない。相変わらず可愛らしくていい女だね」 そう言って俺は意図的に上目遣いでじっと見つめ、テーブルに乗ってる彼女の手をとり優しく撫ぜた。 俺のそんな行動に碧ちゃんは顔を赤くし「恥ずかしいじゃん……ばか」と呟く。 「………… 」 自分でもびっくりする。 「久しぶり」と言って俺の肩を叩いた時の碧ちゃんの俺を見る目が「まだ好き」と言っているのがわかった。だから俺は咄嗟に碧ちゃんのその気持ちを利用したんだ。 俺が女と一緒にいると康介が知ったら、康介は安心して俺から離れられるかもしれない。そうしたら俺も康介のこと、諦められるかもしれない…… そう思った。 ……最低だな。 コーヒーを飲み、二人でケーキを食べながら懐かしくお喋りをする。 この場は俺が奢ることにして、一緒に食事もしようという碧ちゃんについて次の店へ行った。 少し大人になった碧ちゃんは益々女に磨きがかかり、そしてとても美人だ。すれ違う人、男女問わず振り返る様は並んで歩く俺も気持ちが良かった。 碧ちゃんに連れてこられた店は、幸いにも俺の知らない店で、ゆっくりと食事を楽しむことが出来た。 アルバイトや、最近家庭教師の仕事を始めたという碧ちゃんに言われるままここは奢ってもらい、夜も遅くなっていたので俺は家まで送った。 最初は部屋には上らずに帰る。 「お茶でも……」なんて期待した目で見つめられたけど、まだ俺の中で康介の顔がチラついて複雑な気持ちになったから。 イライラする。 顔には出さずに次の約束をして笑顔で別れた。

ともだちにシェアしよう!