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どうしようもなく

次の日、結局素直に昼休みに屋上へ向かう事ができずに別の奴と昼を過ごした。 それでも昼休みが終わる直前に屋上へ向かう。五時間目はサボりたかったし、もし康介がまだいれば丁度いい……いなきゃいないで、それでもよかった。 屋上へ出ると、もう誰もいない。 俺は静かにドアを閉め、どんどん進んだ。 きっと誰も気づいていないであろう、この壁の裏側のスペース。 俺と康介の秘密の場所…… 何度もここで二人で過ごした。 以前康介が行方不明になり大騒ぎしたことがあった。その後見つかってホッとした時に俺が康介にこの場所を教えてあげて、そして「好きだ」と伝えた。まぁ、康介には冗談だと捉えられてちゃんと伝わっちゃいなかったけどな。 色々と思い返しながら裏へ回ると、体育座りで顔を伏せて寝ている康介がいてちょっと驚く。 どうしようか…… このまま屋上から出て行ってもよかったんだけど、なんとなく康介は起きてるような気がしてやめた。 隣にそっと腰を下ろす。 触れるか触れないかの距離で康介を感じる。 久しぶりすぎてドキドキした。 ……やっぱり起きてるよね? 突っ伏してるだけで、きっと寝ていないと思った俺は、康介の方にもたれかかり声をかけた。 「康介……」 俺の声に康介の体がピクッと動く。 「起きてるんだろ?……お帰り、康介」 ゆっくりとこちらに顔を向ける康介に、俺は笑顔を見せる。 俺、ちゃんと笑えてるよな? 「……ただいま。会いたかったです」 康介はいつもと変わらずに俺に微笑みかけてくれ、頬にキスまでしてくれた。 どうしようもなく胸がときめく。 どうしようもなく好きな気持ちが溢れてくる。 酷い態度の俺に対してまだ優しく接してくれる康介に、俺は目の奥が熱くなり涙が出そうになった。 「よかった会えて……はい、これお土産です」 康介はおもむろにポケットから袋を取り出し俺に渡す。中を覗くと可愛らしいイルカのキーホルダーが入っていた。凄く嬉しくて、早速去年買ったシーサー君の所にイルカ君を取り付けた。シーサー君は康介とお揃いで俺が買った去年の修学旅行土産だ。 「あれ? イルカ君は康介とおそろじゃないの?」 てっきりお揃いかと思ったけど、特に何も言われなかったから確認のために聞いてみる。少しの沈黙の後に、何か言いたげな表情を浮かべて康介は頷いた。 そっか…… そりゃそうか。 義理で買ったお土産だもんな。 俺に散々無視されてんだもん、今更お揃いなんて買うわけがない。 俺は何を期待してんだか。 自分の図々しさが恥ずかしかった。 「……そっか」 俺は小さくそう返事をするので精一杯だった。 お土産を買ってくれるだけありがたく思わなくちゃ。 俺から康介が離れていく…… 俺がそうなるように仕向けたのに、まだ俺自身がその変化に追いつけていないんだ。 大丈夫…… これでいい。 そう自分に言い聞かせた。

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