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パーティーのお誘い
今日も家庭教師の日──
碧先生はいつも通りに僕の家に来て、いつもと変わらず優しく指導してくれた。修斗さんのピアスはやっぱり先生の耳についていた。昨日の事が気になったけど、先生は特にその事には触れなかったから僕からは何も言い出せなかった。
昼間は、学校では康介もいつもと変わらず。
いや、寧ろ今までよりも明るく元気が良かったように感じ、すっきりしたようにも見えた。
昨日の事も聞こうと声をかけたけど「大丈夫」と言う康介の言葉と元気そうな姿を見て、僕はそのまま康介の言葉を信用した。
昼休みは周さんと二人で過ごした。
修斗さんは学校を休んでいたみたいだし、康介は屋上に来なかったから、周さんと二人きりで過ごすのは久しぶりだった。
「今度の休みさ、俺と会う約束してただろ?」
いつものように、食後僕は周さんの膝の間に収まりお喋りをする。
「悪いんだけどその日な……お袋と謙誠の結婚パーティーがあるんだよ」
つまらなそうな口調に、僕は周さんを振り返る。
「僕ならいいですよ。お祝いのパーティー行ってきてください。僕と周さんはいつでも会えるんだし……結婚パーティーなんて一生に一回なんですから!」
ましてや自分のお母さんの結婚式。
こんな大事な日なのに僕とのデートを優先していいわけがない。
不貞腐れた顔をしている周さんにそう言って笑いかけると、一通の手紙のようなものを渡された。
「それ、竜太の招待状」
「……え?」
ピンク色の綺麗なカードには、ちゃんと僕の名前が書いてあり、僕宛の招待状だとわかる。
「嘘でしょ!? 僕も行っていいんですか?」
凄い!
嬉しい!
まさかの事態に僕は興奮を隠せなかった。
「僕、結婚式なんて初めてです! 雅さんが僕も来てもいいって? 本当に?……嘘みたい! 嬉しいです!」
僕は周さんと家族でもないのに、こうやって大切な席に招待してもらえるなんて本当に嬉しかった。
僕らの事も認めてもらえてるように感じて嬉しくて舞い上がる。
嬉しさのあまり興奮して、僕は招待状を掲げながら周さんの膝の上で体を跳ねさせて暴れていた。
「わかったからさ、ちょっと落ち着けって。足痛えし……全く、子どもみたいだな」
背後から僕の体を抱きしめて押さえつけながら周さんは笑う。
「それと勘違いすんなよ? 結婚式じゃなくて簡単なお祝いのパーティーだからな。チャペルとか式場じゃなくて、謙誠の店貸し切っての身内だけの小さなパーティーな。そんな舞い上がるようなことじゃねえから」
「それでも! それでも身内だけのパーティーに僕も呼んでもらえるなんて嬉しいです!」
僕は感激しながらその招待状を大事にポケットにしまった。
学校の帰りに一緒にいた康介にこの事を話した。
はっきりと打ち明けたわけじゃないけど、雅さんには周さんとの事を認めてもらえてる事、父さんはどうだかわからないけど僕の母さんもきっと周さんとの事をわかってくれていて、家族同然に僕らを見守ってくれてる事、そして雅さんに身内だけの結婚パーティーに招待された事を、嬉しくて夢中で康介に話した。
康介はそんな僕に相槌を打ちながら「よかったな」と笑ってくれる。その笑顔もいつもと全く変わらなかったから、その時康介がどう感じて何を思っていたかなんて、僕にはまるで想像もつかなかった。
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