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未練タラタラ
せっかく今夜は竜太が泊まりに来る予定だったのに、修斗たちのせいで帰ってしまった。
まあ、わからないでもない。
竜太が幼い頃からの親友が康介。人と関われなかった竜太が唯一心を開いていた幼馴染。そんな康介が、竜太に別れたことを打ち明けもせずにいたのが納得いかないんだろう。納得いかないというか、信じられないって言ったところか……
俺から見れば、二人の問題なんだからほっとけって思うんだけど、今日の修斗の態度を見てればしょうがないよなって思った。
俺は先日修斗から「康介と別れた。フラれてしまった」と聞かされていた。ずっと修斗の行動を見てきた俺は、別れたと聞かされても大して驚きもしなかった。だってあんなことしてりゃフラれるのは当たり前だし。
学校でも修斗は康介を避け、殆ど教室で過ごすかサボって休むかしていた。あんな仕打ちをして別れたんだ……康介の方から修斗に会いに来るなんてことはないだろう。
お袋の結婚パーティーでも修斗は元気がなかった。寧ろどんどん酷くなっていく。俺だって修斗とはガキの頃からつるんでいたわけで、心配じゃないと言ったら嘘になる。
竜太は帰っちまったし、一人アパートに戻り携帯の画面を眺めた。修斗から連絡がきそうだな……なんて思っていたら案の定メールが入った。
『さっきは八つ当たりだ。ごめん』
珍しく素直な内容のメッセージに思わず吹き出す。
珍しく素直に……って、きっとそれだけ精神的に参ってるんだろうと思い、俺はすぐに修斗に電話を入れた。
『なんだよ、竜太君も一緒にいるんだろ? わざわざ電話なんてよかったのに…… 切るぞ』
出るなりすぐに電話を切ろうとする修斗に「竜太は帰ったし暇だから来い」と伝えると、わかったと小さな返事と共に電話は切れた。
然程待たずに玄関のチャイムが鳴り、修斗が訪ねてくる。手にはコンビニの袋。
「気を遣わせて悪かったな……はい、これお詫び」
「ほんとだよ。竜太にまで気を遣わせやがって……」
手渡された袋の中を見るとプリンとコーラ。俺の部屋に入るなり、ぺたんと床に座ってプリンを食べ始める修斗を見つめる。
「……そんなに辛いならさ、より戻せばいいじゃんか」
プリンを掬う手が止まる。修斗は何も言い返さない。
「自分からフラれるように仕向けときながらさ、いざフラれたら未練タラタラなんだろ?」
俯いた修斗の顔の下に雫が溢れた。
……は? マジか。
「お前、よっぽどだな。大丈夫か?」
前にもこんなような事があったけど、泣くほどじゃなかった。
でも散々アプローチされて付き合い始めた男と別れた時も、変に落ち込んでたっけ。
俺は床に座る修斗の隣に腰を下ろした。
「周みたいな自信……俺も欲しいよ。俺に自信があればさ……こんな事にならなかった筈なのに……なんでこんな風になっちゃってるんだろ。なんで俺たち別れてんだろう……」
ぶつぶつと泣きながら喋る修斗。
自信……
俺からしてみれば、修斗の方がいつも自信満々なナルシストだ。いや、でもそれはそういう風に装ってただけなのかもしれねえな。
今ここでグズグズしてるのが素の修斗だ。
「なんで? って、馬鹿か? お前がそう仕向けた結果だろ? 自業自得だろうが……全く、よくわかんねえこと言ってる。随分とへなちょこなんだなお前」
言ってる事とやってきた事がチグハグすぎて、やっぱり俺には理解できなかった。
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