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俺はどうしたい?

兄貴と話してからは不思議と吹っ切れたのか、何だかすっきりした気持ちで数日過ごした。 正直、修斗さんの事を気にすることなく過ごしていた。 なんだ…… 別に大丈夫なんじゃね? 修斗さんと付き合う前に戻っただけじゃん。 そう、何も変わらない。 ただ俺の側に修斗さんがいないだけだ── 何日か経って竜が珍しく夜にひょっこりうちに来た。 俺と修斗さんが別れたのを何で教えてくれなかったんだってすごい剣幕で言ってきて、今更だけど竜に話していなかったんだと気が付いた。 何で教えてくれなかったんだって…… 竜にとってみたら、俺が何も相談しないでいたのが気に入らないのか。ガキの頃からお互い知らない事はないんじゃないかってくらいずっと一緒で、でも俺は何となく竜には弱い部分とか見せたくないというか何というか……変なプライドみたいなのがあって。 いつの間にか強く逞しくなってる竜に弱みを見せたくないなんて、そんな風にも思ってしまっていたからか、俺に詰め寄ってくる竜の態度に俺は少しイラついてしまった。 ……なんだか俺、ガキくさい。 「何なの? 俺と修斗さんのことだろ? 竜には関係ないじゃん!……ほっとけよ!」 竜は優しいから…… 俺じゃなくても大事な人間が悩んでいたり落ち込んでいたりすれば、自分のことのように心配したり何とかしようとしたりする。 わかってるよ…… でも竜の言葉ひとつ、俺を見るその表情ひとつが俺の気持ちを掻き乱していく。 せっかく大丈夫になったのに。 修斗さんのいない生活が大丈夫になったのに…… 今更やめてくれ……ほっといてくれ。 「だって!……だって今日の修斗さん、僕には泣いてるように見えたんだもん! あんなに元気のない修斗さん、見たことないよ! 何で? 修斗さんの事嫌いになっちゃったの?」 今にも泣きそうな顔の竜が、真っ赤な顔をして俺のことを睨みつける。 「………… 」 なんなんだよ。 修斗さんが泣いてる? 俺のせいであの修斗さんが元気がない? そういえばあの日以来、学校で修斗さんの姿を見ていない。「別れてやる!」って俺が言った時の修斗さんの顔が記憶に蘇る。 あの時からずっと? 意識の奥へ閉じ込めていた修斗さんへの感情がまた湧き上がってくる。 ( 修斗さんのこと嫌いになっちゃったの? ) 嫌いなわけない。 俺はやっぱり修斗さんが好きなんだ。 何やってんだ俺は! あの時ちゃんとわかってたんじゃないのか? 修斗さんは言ってることと思ってることが違うんじゃないかって。俺のことを遠ざけようとしていたくせに酷く辛そうな顔をしていた…… 俺、ちゃんとわかってたんじゃねえのかよ! ( そうは言っても結局自分がどうしたいかが大事だよな ) 兄貴の言葉。 俺はどうしたい? 俺は修斗さんに側にいてほしい。 側で笑っててほしい。 修斗さんが元気がないなんてダメなんだ。 だってやっぱり好きだから。 俺にとって修斗さんは特別で、大切な人なんだ。 「悪い……帰ってくれるかな?」 「……康介」 自分の不甲斐なさに泣けてくる。 バカさ加減に嫌気がする。 泣きそうな顔を竜に見られたくなくて俺はベッドに潜った。 「康介?」 「………… 」 「康介ってば!」 「うるせーな! 帰れって言ってんだろ! 出てけよ! もうほっといてくれ!……帰れ!」 弱くて情けない自分を見られたくなくて、俺は乱暴に竜の肩を押し部屋から追い出した。 うわ……ダメだ俺。 凄え嫌なやつじゃん。 でも一人になりたかった。 竜、ごめんな。 気付かせてくれてありがとう── 俺やっぱり修斗さんと別れるなんて無理だ。

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