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周の言う通りだ

「そんなに辛いならさ、より戻せばいいじゃんか」 周の家に行くのにコンビニに寄りプリンと飲み物を買っていった。俺は甘いものを食べ気持ちを落ち着かせようとしていたのに、不躾な周の言葉にまた心が騒ついてくる。 ……より戻せば、なんて簡単に言ってくれる。 相変わらずムカつくくらいの直球。 こいつは言葉をオブラートに包むって事知らないんだった。 「自分からフラれるように仕向けときながらさ、いざフラれたら未練タラタラなんだろ?」 悔しいけどその通りだから何も言い返せない。 目の奥がキュッと弾けてボロボロとまた涙が溢れた。俺のそんな姿に周は心配そうな声を上げ、俺の隣に腰を下ろす。 「お前、よっぽどだな。大丈夫か?」 大丈夫じゃない…… もう俺は消えてなくなってしまえばいいとさえ思う。 なんでこんな事になってんだろうな。 康介と一緒にいて凄い楽しかったのに。 ……なんで俺ら別れてんだろうな。 俺に寄り添い話を聞いてくれてる周に俺は甘えた。 溜め込んでいた愚痴をボロボロと零した。いくら恨み節を吐いたところで自業自得だよ、そんなのわかってるよ。 そう思った途端、自業自得だへなちょこだと周に言われた。 本当にこいつムカつく…… とりあえずこいつは俺を慰める気はゼロだ。でもそれが周のいいところでもあるよな。 「……慰めてほしい?素直に康介にゴメンって言えばいいんじゃねえの?」 もっともな事を言われる。 だから! 俺が謝ったところでもう手遅れなんだよ。 「お前自信がねえって言うけどよ、なんでだ? 康介のことまだ好きなんだろ? 別れて後悔してんだろ? ならさっさと謝りゃいいじゃん」 それができるなら今頃ここにはいねえよ。 こいつドSか? さっきから嫌な事チクチク言ってきやがる。 段々悔しくなってきた。 頬を伝う涙を手の平で拭い、俺はズケズケとものを言う周を睨んだ。 「周のその自信はどっから湧いてくんの? 竜太君がずっと周の事が好きだってどうして信じられる? 何でずっと一緒にいられるって思うわけ? 男同士だぞ? 俺は康介とずっと一緒にいたかったけど……きっと康介は気がつくんだ。女の方がいいってさ」 竜太君がこの先どう思うのかなんてわからない。男同士なんだぞって今更わかりきった事を言ってやった。でもちょっと意地悪だったかな? なんて少し心配したのに、周は意味がわからないのかキョトンとした顔をして俺を見る。 「は? 竜太がこの先俺のことをどう思うかなんて俺にはわかんねえよ。人の心がどう動くかなんて俺にわかるわけねえだろ? あのな、竜太が……じゃなくて俺が、な。俺が竜太の事をずっと好きでいられる自信があるってこと」 今度は俺がキョトン、だった。 ははっ…… 本当にバカだな俺は。 周の言う通りだ。

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