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いつもの四人で

「……… 」 「竜、ごめんって……機嫌直して。ね? おかわりする? この苺のやつも美味そうだよ? ほら、遠慮すんなって」 僕らはいつもの四人でファミレスに来ている。 そう! いつもの四人で。 康介と修斗さんも一緒だ。 いつの間に仲直りしたのか、二人のあの酷い状態がまるでなかったかのように今まで通りの通常運転。 それはとても嬉しいことで、本当によかったと思えるんだけど…… ただ僕は康介からずっと無視されていたことが納得できずに怒っていた。 だってあの日、僕が余計なことを言ってあんなに康介は怒っていて、それ以来電話にも出てくれないしメールも無視。学校でも会わなくなったから、だからすごく怒ってるのかと思うじゃん。 それなのにいきなり今日のお昼休みに修斗さんと二人揃って屋上に来てさ、何事もなかったかのように過ごして……周さんも何も言わないし、康介だって前と変わらずに僕に話しかけてくるし…… そんなこんなで、僕はどう気持ちを整理したらいいのかわからなかったんだ。 そして不貞腐れていたら、修斗さんと康介が奢ってくれるって言うから僕は周さんと一緒にここにいる。 さっきから僕の目の前で、申し訳なさそうにして康介が頭を下げてる。 「ほんとメールもさ、電話もさ、全然気がつかなかったんだよ……てか、なんか今までにないくらい俺テンパっててよ、実際あんまり記憶ねえんだわ。竜の事、無視してたわけじゃねえし、ましてや怒ってねえから。な?」 僕の前にデザートのメニューをずいっと広げ、おかわりをどうぞと言う康介。 さっきはチョコレートのケーキを食べたから……やっぱり今度は苺がいいかな。 僕は無言で苺のショートケーキを指差すと、いそいそと康介が注文してくれた。 周さんはさっきから黙ったまま、でもいつもと変わらない雰囲気でコーヒーを啜ってる。 修斗さんも時折康介にちょっかいを出しながら携帯を弄り、本当に今まで通りの光景だから、いつまでも不貞腐れてる僕の方が何だか恥ずかしかった。 「……本当に怒ってない?」 康介に聞くと、うんうんと大袈裟なくらい頷き、むしろ感謝してるんだと笑顔を見せる。 「竜の言葉で俺は気がついたんだ。ありがとうな」 「………… 」 いつまでも僕が怒ってたってしょうがない。それに僕だって康介に謝りたかったんだ。 「でもあの時僕も言い過ぎた。ごめんね、康介……ほんとよかったね」 チラッと修斗さんの方を見ると目が合った。 そして「心配かけてごめんね」と修斗さんは僕にまで謝ってくれた。 本当だよ…… 凄く心配したし、二人を見ていて本当に僕は凄く辛かったんだ。 思い出すだけでも目の奥が熱くなる。 本当によかった。 「それにしても康介が僕の家に乗り込んできたのには驚いちゃったよ。てっきり僕に対して怒ってるのかと思ってたからさ、まさか碧先生に話つけにきたなんて思わないよね。康介ってかっこいいなって僕感心しちゃった」 わだかまりがなくなって、すっかり気持ちがすっきりした僕はあの時の光景を思い出し康介に話した。 「あ……それは、あ……あは……」 なぜか慌てた様子の康介が、修斗さんの方をチラッと見る。 「なに? 碧ちゃんがどうかした?」 手元の携帯から顔を上げた修斗さんが康介の方を向いた。 「康介がね、碧先生に修斗さんのこと言いに来たんです。康介、凄くかっこよかったんですよ。俺は修斗さんが好きなんです!って。修斗さんのこと諦めてください!って」 僕は康介のことを褒めたつもりだったんだけど何だか不穏な空気が流れ始め、あれ?……って思った時には修斗さんが怖い顔をして康介を睨んでいた。

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