316 / 377

仲間、友達、思い出作り

康介と修斗さんのゴタゴタもすっかり落ち着き、またいつもの日常に戻っている。 今日も放課後、僕は部活に行こうと美術室へ向かって廊下を歩く。体育館横の通路に差し掛かると、向こうで修斗さんと康介が揉めているのが見えた。 何かあってもいつもなら康介は修斗さんに合わせるのに、珍しく大きな声を出して修斗さんに食ってかかってるから、驚いて僕は二人の方をしばらく見つめた。 全く…… こないだやっと仲直りしたっていうのに何やってんだろう。 「だから! 絶対にダメです!」 「えー、誘われちゃったし康介は関係ないじゃん」 「……でもやだ! 周さんは?」 ……? 周さん? 康介の口から周さんという言葉が出て、何だろうと胸騒ぎ。僕は早足で康介達のところに向かった。 「どうしたの? 康介、周さんは……って何?」 僕に気がついた修斗さんは楽しそうに僕の名前を呼び、康介はそんな修斗さんとは対照的に困りきった情けない顔を僕に向ける。 「竜! 聞いてよ、酷いんだよ! 修斗さんってばさ……」 僕の腕にしがみついて修斗さんを睨む康介。 「何だよ、竜太君に泣きついたってしょうがないじゃん」 「やだって言ったら嫌なの!」 「………… 」 何を康介はそんなに嫌がっているのだろう。珍しいな、と思いながら 僕は修斗さんに詳しく話を聞いた。 「修斗さん、どうしたんですか? 何を康介はこんなに駄々こねてるんです?」 「駄々こねてるなんて言ってんな! 俺は子どもじゃねえよ!」 康介が怒ってるけど、煩いからとりあえず無視をする。 「あ、康介がね、俺が友達と卒業旅行に行くのが嫌だって言うんだよ」 卒業旅行…… 修斗さんからその言葉を聞いて、もうすぐ卒業なんだと改めて実感する。ああ、やっぱり寂しいな。 「ダメに決まってんでしょうが! 何で塚っちゃん先輩と一緒に旅行なんだよ!」 「塚っちゃん……先輩??」 一瞬、誰だそれ? って思ったけど思い出した。修学旅行の時の写真の人だ。修斗さんと一緒に親しそうに写っていた。でも「塚っちゃん先輩」って変な呼び方。 「塚っちゃんと二人きりじゃないよ? なんでそんなに目の敵にしてんだよ。康介の心配症」 「二人きりじゃなくても! 何で修斗さん誘われてんの? 仲良かったんですか?」 あ……康介が心配するの凄くよくわかるかも。 「修斗さん、康介が心配するの当たり前です。周さん言ってたじゃないですか……塚っちゃん先輩、魔が差したんじゃないかって。修学旅行の時、何かアプローチされてたんじゃないんですか? 去年、写真の様子見て康介心配してたじゃないですか」 記憶を頼りにそう聞いてみると、康介が顔色を変えて修斗さんを問い詰める。 「何だよそれ、魔が差したって何? 何かされたの? は? 修斗さん?」 あ、そうだった。康介はこの話してる時その場にいなかったんだっけ……僕余計なこと言ったかな。 ……ま、いっか。 「ちょっと? 竜太君てば! 何もないよ。てか俺もよくわからねえもん。周がいたから大丈夫だったみたいだけど……塚っちゃんノンケだよ? 心配しすぎだってば」 「ダメじゃん! 何か狙われてんじゃん! なにノンケって? やだやだ! あーもう! 周さんは一緒じゃないの?」 「周? 周は誘われてねえんじゃね? あいつ友達いないもん」 「………… 」 そうなんだ。 まぁ確かに周さんが学校で修斗さん以外の人と一緒にいるの見たことがない。 「なら俺も行く! 修斗さん、俺も一緒に行きます!」 「無茶苦茶言ってんな……あ! そっか! そうしよう! ねえねえ、竜太君も一緒行こ? 俺と康介と、周と竜太君で。四人で旅行しようぜ」 突然の修斗さんの提案に、ぱあっと明るくこちらを振り返る康介の顔…… いや、僕は構わないんだけど、塚っちゃん先輩の方はいいのかな? 「あの……僕は構わないんだけど、塚っちゃん先輩は?」 「あぁ、いいよ別に。断っとくから。だって康介や竜太君達と一緒の方が楽しそうだもん」 修斗さんの方が無茶苦茶だ…… でも康介も納得してるみたいだし、僕も誘ってもらえたのが嬉しいし、とりあえず問題解決……かな?

ともだちにシェアしよう!