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小さな恋の物語/知りたい本心
「………… 」
あれ?
何か様子が……
ライブハウスの前、何人かの人が疎らに立ち話をしている中、奥の方に竜太君と康介君のお兄さん、それと祐飛がいた。
俺の姿を見るなり祐飛はフッと目を逸らす。
「……?」
気のせいかな? 俺の方を見てくれない祐飛に、少し不安になった。
「兄貴はどうすんの? 打ち上げ行くの?」
康介君に聞かれたお兄さんは「明日は早いから」と言って、少しだけお喋りをしてから帰って行った。
「……祐飛? どうしたの?……あれ? なんか顔赤くね? もしかして酒飲んだ?」
ムッとしている祐飛の顔が心なしか赤くなっている。
「別に……ビールだし」
いやいや、ビールはお酒だし。ダメじゃん。
しばらくして工藤君はそのまま帰っていき、俺らはライブハウスから出てきた周さん達と一緒に打ち上げ会場となる居酒屋へぞろぞろと歩いた。
「ねえ、どうしたの? 入江君とケンカでもした?」
隣を歩く竜太君に心配される。
さっきから少しだけ酔った様子の祐飛が俺のことを無視してるんだよね。
「……ん、わかんない。祐飛、酒呑んで酔っちゃってんの」
俺から離れて歩く祐飛を見つめる。
結局居酒屋に到着するまで、祐飛と話すことはなかった。
打ち上げは周さん達の他に、もうひと組のバンドの人達とその友人らしき人達と俺ら……なんだか周りが大人ばかりで、ここにいてもいいのだろうかと不安になる。
小上がりの個室に案内され、適当に腰を下ろすと竜太君に席を変われと促され、場所を譲った。
……あ、そうか。俺の隣は周さん。
気が利かなくて申し訳なく思いながら横を見ると、相変わらずブスッとした祐飛が俺の方を見ていた。
何で不機嫌なのか聞きたかったけど、すぐに誰かが挨拶を始め乾杯をする。未成年らは酒呑むんじゃねえぞと声をかけられたけど……周さんや修斗さんが飲んでるのってビールじゃないのかな?
俺と祐飛はジンジャーエールを頼んだので、すぐに祐飛の酔いも覚めるだろうと安心していたんだけどな。気がついたら祐飛は誰かの酒を呑んでしまっていた。
明らかに俺のことを避けるようにして他の奴とお喋りしている祐飛に、話しかけるタイミングを逃した俺はいたたまれなくなり席を外した。
……何か気に触ることしたかな?
ちょっとはしゃぎ過ぎて、ライブの間祐飛のことを放ったらかしにしちゃったかもしれないけど、あそこまで不機嫌になるようなことかな?
あぁでも祐飛ってば酔っ払ってるから、普段抑え込んでる感情がだだ漏れてんのかもしれない。色んな奴から祐飛は何考えてるかわからねえなんて言われるけど、祐飛はいつも沢山、色んなことを考えてる。ただそれを表に出さないだけなんだ。
「………… 」
少しだけ酔った今なら、もしかしたらはぐらかさないで俺の事をどう思っているのか話してくれるかもしれない。
でもやっぱり真面目に聞くのは怖いや。
個室から出た廊下の隅に座り込みそんな事を考えていたら、トイレにでも行くのか、ふらふらと出てきた周さんに声をかけられた。
「ん? 何やってんだこんなとこで。酔った?」
「いえ……俺は飲んでないから」
周さんはどかっと俺の横に座り込むとジロジロと顔を覗き込んでくる。
……トイレ、行かないのかな。
「何ですか?」
「いや……お前ライブどうだった? 楽しめたか?」
心配そうな顔をして俺に聞く。
「はい、凄えよかったです! 周さんかっこよくて痺れた!」
「はは、それならいいんだけどよ……お前最後の曲で泣いてたから、ちょっと心配だったんだ」
あ……
「ごめんなさい……なんか感極まっちゃって。俺みっともねえな」
見られてたんだ。恥ずかしい。
「まぁ、俺は今そんな事言いに来たわけじゃねえんだわ…… 」
「……?」
周さんはスッと立ち上がり、軽く屈伸するように膝を曲げ伸ばししながら俺を睨んだ。
「お前の大好きな入江君がよ、さっきから俺の竜太に絡んでんだよ。あれなんとかしろよ。あんなんじゃちっとも竜太と喋れやしねぇ……そろそろ俺もイラついてきたから、便所から戻るまでに何とかしろ」
そう言い捨てて、周さんはトイレの方へ行ってしまった。
え……?
祐飛が絡んでるって?
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