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小さな恋の物語/帰りたくない

「帰らない」 ……は? 「帰らないって?……へ?」 キッと俺を睨むように言い放つ祐飛にまた俺は混乱する。「今夜は帰りたくない……」なんてセリフは恥じらいながら言うもんだろ? 何で俺、睨まれてるんだよ。 てか、祐飛の真意がわからない。 「直樹……」 シャツの裾を引っ張ったままでジッと俺の事を見つめる。 え……と、ホテル……でもいいのかな? 何処か近くにホテルあったっけ? 頭をフル回転させて、この辺りのホテルの有無を思い出す。 俺が祐飛とホテル? 嘘みたいだ。 「直樹ん家、早く行こう?」 「………… 」 はい。ごめんなさい。ちょっと思考が飛びすぎました。そうだよね。そういうことだよね。ちょっでもいやらしいイメージをしてしまったことを俺は猛省した。 一応、寝てしまってるかもしれないお袋に連絡を入れると、祐飛に会うのが小学校の時以来だと勝手に喜んでしまい、寝てりゃいいものを待ってるなんて言い出す始末。それでもコンビニ寄ったりもするし遅くなるから待たなくていいと伝えると、じゃあ寝てるから遅くまでほっつき歩いてないで早く帰ってらっしゃいとどやされた。 酔っ払った顔に泣き腫らした目。なるべくなら誰にも見せたくない。 「祐飛どうする? 飲み物くらい買ってく?」 ちょうど目の前にコンビニがあったので二人で立ち寄る。それぞれ飲み物と少しの菓子を購入してから家に向かった。 「直樹の家……久しぶりだ」 「そうだね」 お袋達は寝てるみたいで部屋の明かりも消えている。ホッとしながら祐飛を自分の部屋に案内した。 「部屋……綺麗」 ボソッと呟き、祐飛は俺のベッドに腰掛ける。 「………… 」 たまたま昨日、部屋を片付けておいて本当に良かったと思いつつ、ベッドに座り寛ぐ祐飛を見て他意はないよな? とドキドキする胸をそっと押さえた。 「帰りたくない」なんて言ったのはきっと酔っ払ってしまってるし泣いて目が腫れてしまったから。それ以外の意味はない。 「祐飛……まだ顔、赤い。着替える? 俺のでよければ貸すよ」 ベッドに座る祐飛にどうしても近寄れない。どんなに考えても下心が湧いてしまう自分が嫌になる。 ベッドから離れた床に俺は座り、祐飛の方へTシャツを投げた。 「サンキュ。あ、シャワー借りていい?」 「………… 」 他意はない。 お前が期待するような意味はないから……大丈夫。冷静になれ。 落ち着け俺! 「おう、風呂場はこっちな」 俺は祐飛を風呂場に案内し、タオルを置いて部屋へと戻った。

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