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竜太と過ごす昼休み

卒業式が間近に迫る── 俺は今までのサボりとテストの点数のツケが回ってきたお陰で、ここのところ毎日朝から居残り時間まで皆勤賞だ。 担任からは卒業式までの期間「一時間でもサボったら卒業できないと思え」なんて言われ、おまけに保健医の高坂にまで同じことを言われ念を押された。「間違っても保健室には来るなよ」と言ってわざわざ俺の教室まで来やがって。 イライラもするけど、竜太が毎日嬉しそうに昼に会ってくれるから良しとするかな。俺も食べると思ったから少し多めに作ってきた……なんていつも言ってるけど、どう見たって二人用の大きな弁当箱。毎日竜太は俺のために朝から早起きして作ってくれてんだ。これで卒業を逃したら目も当てられない。 今日も昼休み、早めに修斗と屋上へ向かった。いつもなら俺たちが少し先か、竜太と康介が少し先か……で、あまり待たされることなんかなかったのに、今日に限ってニ人はなかなか来なかった。 「どうしたんだろうね? まだかな……」 修斗も気になるのか、屋上の入り口の方を見る。すると見慣れない奴が一人、屋上へ入って来た。 そいつは真っ直ぐに俺と修斗の前まで来ると、何やら修斗に用がある奴がいるから一緒に来いって不躾に言う。修斗は初めのうちは態度のデカイそいつに渋っていたけど、ちょっと渡したいものがあるだけだから……なんて言われて、何かを察したのか急にホイホイと行ってしまった。 「もうそんな時期なんだな」 振り向きざま俺にボソッとそう言って出て行った後、俺も思い出した。 去年作った卒業生に贈る胸に着ける飾り物。わざわざ手作りしてクラス毎に纏めて卒業生に渡す事になるから個人的には渡せない。それでも中には意中の先輩に直接渡す奴もいたりして、ちょっとした告白イベントみたいになっていた。男子校なのにな、乙女かよ……ってちょっとバカにしてたっけ。 そっか…… もうすぐ俺も卒業。 竜太も今日、その胸飾りを作ったのか。 制服の第二ボタンとか、胸飾りを貰ってほしいとか、そういう卒業式あるあるみたいなのはアホらしいなんて思ってたけど、竜太のなら俺も欲しいな、なんて思ってしまった。 修斗が出て行ってからすぐに、竜太と康介が屋上へ来る。 修斗がいないことを心配して、結構な勢いで康介はまた屋上から出て行ってしまった。 わかりやすすぎて相変わらず面白い奴…… 心配している竜太に大丈夫だと俺は言い、今日はニ人で昼休みをのんびりと過ごした。 「なぁ、竜太も今日はあれ、作ったの?」 「あれ? あぁ、胸に飾るやつですね。はい、作りましたよ。僕早く終わったからニ個も作らされちゃった。あと康介の手伝いも……」 「やっぱり竜太は器用なんだな。俺は去年作ったけどすぐギブして修斗にやってもらったわ」 それとなく竜太の作ったやつが欲しかったとこぼすと「そんな物…」と笑われてしまった。存外竜太より俺の方が考えが乙女なのかもしれない。 「卒業式の日は、終わったら何か予定ありますか?」 急に聞かれ俺は何もないと答えると、嬉しそうに「お祝いしますから」と言われ嬉しくなる。康介と何か考えてくれているらしい。 卒業して竜太と離れるのは嫌だけど、俺のためにこういう事を考えてくれるのは素直に嬉しかった。

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